中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3460回
鍋底景気の再現は難しいですね

日本は資源小国ですから、輸入した資源を加工して付加価値をつけ、
そのかなりの部分を輸出して外貨を稼がないと、
輸入した資源の代金も
人口の6割をこえる不足食糧の輸入代金も支払うことができません。
それでも工業製品の付加価値は
資源や食糧に比べて遥かに大きなものですから、
少しばかりの輸出が日本にかなりの儲けをもたらします。
そのおかげで日本は大きな顔ができるのです。

しかし、グローバル化がすすむと、
もっと賃金の安いところに工場を移して現地生産をするか、
そこから更に第三国に輸出すれば、
もっと有利な投資が可能になります。
日本国内からスタートした製造業でも気がついて見たら、
消費国に工場を移したり、低賃金の新興国に工場を移しています。
当然のことながら、新興国では見様見真似で先進国に追随して
更に一段とコストを下げる動きをするので、
現地に進出した先進国の立場もうかうかしてはおられません。
海外から進出した企業がホッと一息つけるとしたら、
それはたゆまざる努力を続けて
他の追随を許さない偉力を発しているからだと言うことになります。

そうした努力を
生き残った日本企業は今後も続けることになるでしょうが、
生産基地はもはや日本ではなくなっています。
そこで働く人の大半は、もちろん、
現地の賃金の安い人たちですから
日本国内の工場は一軒また一軒と店じまいをすることになり、
日本人は自分たちの国にいる限り失業に見舞われることになります。
つまり仮りに景気の恢復が予想より早かったとしても
立ち直るのは日本の海外進出企業であって、
日本国内だけを守っている工場ではないということになります。

日本国内にいる限り仕事を失う人の方が多いのですから、
節約ムードはそんなにすぐには解消されないのです。
それも欲しい物は一通り充ち足りて
成熟社会の仲間入りをしてしまったあとですから、
日本の国内消費はそう簡単には先へ戻れないのです。
かつての鍋底景気は中国で再現できたとしても、
日本ではそう簡単には戻って来ないと私は見ています。


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2009年8月30日(日)

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