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第3498
賃上げよりコストダウンの時代です

ドイツはユーロ加盟国の中でも産業立国に熱心で、
金融不安による実体経済の悪化がはじまると、
製品のコスト・ダウンに力を入れるようになり、
労賃を下げただけでなく、
生産性の向上にも力を入れるようになりました。
ですから、同じヨーロッパの中でも被害が比較的少く、
建ち直りが早いと言われています。

それに比べると、日本の金融機関は
バブルの崩壊で長期にわたってひどい目にあっているので、
欧米の銀行や証券会社に比べると
今回は被害が少くてすんでいますが、
輸出の激減と国内消費の減退によって
かなりの痛手を蒙っています。
操短や休業によって失業率が5%をこえるようになり、
さしあたり派遣社員の首切りからはじまって、
失業は更にふえる方向に向っています。

そうした情勢下の総選挙だったせいもあって、
政権が交替し、新政権が次々と新しい政策を打ち出していますが、
失業対策もその中の重要な政策と言ってよいでしょう。
新聞の報ずるところによると、
新しい厚生労働大臣は生産部門への派遣社員の雇用は
禁ずるとのことですが、
恐らくこれ以上の賃下げを防ぐためと思われます。
賃下げをすれば更に実体が悪化することを
おそれてのことでしょうが、
結果的にはドイツがやっていることと
反対のことをやることになります。
生産性をあげるよりも、
賃下げを防ぐことに力を入れることになれば、
賃金の安い国と更に不利な競争をするところに
自らを追う込むことになってしまいます。

本当は企業の雇用に政府が干渉するよりも
産業界に任せた方がうまく行くのです。
そうした「神の見えざる手」を無視して
産業界に未経験な議員さんたちが口だけでなく手まで出せば、
日本の景気は恢復どころか、
戻りは一段と先延ばしになってしまいます。
はじまったばかりですから、
内閣支持率も常識的な水準にありますが、
経済の建て直しはかなり時間がかかることになると
やがて全く違った数字になるのではないでしょうか。


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2009年10月7日(水)

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