中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3519回
借金してお金の儲かった時代も

日本では郵便局をどうするかでもめていますが、
本当に問題なのは銀行じゃないでしょうか。
銀行は産業界に資金を融通するところで、
私がお金の話をはじめたいまから50年ほど前は
一般庶民とはほとんど縁のない存在でした。
一般庶民がお金を預けるところも、
お金を出しに行くところも郵便局で、
株をやっている人で配当金をもらう立場の人くらいしか
銀行に口座を持っていませんでした。

それがサラリーマンや家庭の主婦と関係があるようになったのは
住宅ローンの分割払い制度が取り入れられるようになってからです。
東京にボツリボツリとマンションが建ちはじまった頃、
マンションを建てた建設業者たちは
一時金で払い切れない購入者のために
長期分割払いを銀行に持ちかけました。
高度成長がはじまると、不動産は値上がりをはじめましたが、
値上がりするのは土地であって、
建物ではないという理由でマンションは不評でした。

しかし、私は働き盛りの人は
仕事場に近いところに住むメリットがあるので、
当時、盛り場ブルースで謳われた「銀座・赤坂・六本木」、
それに「渋谷・新宿・池袋」に建ったマンションには
稀少価値があるから、投資の対象になると主張して、
長期分割払いで購入することをすすめました。
まだ住宅ローンが確立していませんでしたから、
銀行に信用のある人でないとお金を貸してもらえなかったのです。
そこでどうやったら、銀行に信用してもらうか、
「借金学入門」とか、
「銀行とつきあう法」と言った本を書いて
ベスト・セラーズになったことがあります。
私がその話をしたら、講演に同行した文芸評論家の臼井吉見さんから
「へえ、銀行からお金を借りられるのですか。
僕は銀行とはお金を預けに行くところだとばかり思っていました」
とびっくりされたことがあります。
それくらい一般庶民とは無関係なところだったのですが、
早くから銀行からお金を借りるコツを覚えた人が
一儲けする時代が日本にもあったのです。


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2009年10月28日(水)

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