中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3523回
アメリカのマネーゲームに終止符

お金はたくさん刷って物の値段を押し上げたり、
インフレをまき起したりすることはできますが、
付加価値を生むことはできないのです。
ですから政府が企業を倒産から救ったり、
歳出の不足分を一時的に補うことはできるとしても、
産業界がきちんと付加価値を生む生産に従事したり、
政府の収支の辻褄がきちんと合っていなければ、
経済はうまく廻って行かないものです。

そういう意味では通貨が硬貨から紙幣に変わり、
その発行権をそれぞれの国の政府が握るようになったことは、
世界の経済を
非常に不安定な状態に追い込むことになってしまいました。
とりわけアメリカのように
世界一の経済大国で通貨の不安が起ると、
アメリカだけでなく
世界中の経済が大ピンチに追い込まれてしまいます。
今回起ったことは
金融業界だけに起ったことだと思ったら大へんな間違いで、
アメリカが世界の王座からころげ落ちる
「終わりの始まり」と見てよいでしょう。

従って金融業界にふりかかった埃りをふり払ったら、
金融業界はうまく立ち直ると思ったら大間違いで、
「お金でお金を稼ぐ」ビジネスに終わりが来ており、
銀行が適当に資本の提供をしたら、
GMをはじめアメリカを代表する生産事業が元に戻れると思うのも
イージーすぎるのではないでしょうか。
いまアメリカで起っていることは
1929年の第一次世界大恐慌のあとに起った
アメリカ流民主主義とアメリカ流資本主義の
「一巻の終わり」ではないかと私は見ています。

では「次はアジアの時代か」
と気の早い人は早合点するかもしれませんが、
歴史が私たちに教える限りでは、
統一の次は統一ではなくて分裂です。
「文明の衝突」もその一頁だし、
「中国の抬頭」もその一巻です。
ドルがポンドの跡を追うにしても、
明日にはじまることではありません。
私たちにできることは
経営方針の定まらないアメリカの銀行に
近寄らないことくらいなものでしょうか。
いまの時点で近寄っても当分は心配ないでしょうが。


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2009年11月1日(日)

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