中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3609回
銀行がトクするだけで景気は立ち直らない

金利が安ければ事業をやる人は助かると思うのは
自分で経営にたずさわったことのない人の考えることです。
金利が安いと銀行の方から
借りて下さい借りて下さいと足を運ぶことが多いし、
輸出が拡大して外貨が貯まり、
金融界に過剰流動性の発生した時は、
銀行の方が担保能力のある人を選んで盛んにお金を貸しつけました。

お金を借りても投資先のない人たちは
そのお金で土地を買ったり、株を買ったりしたので、
実需がないのに土地や株が急騰し、やがてその反動が来て、
お金を借りた人の方がひどい目にあわされたのです。
ですからお金を借りる能力のある人ほど借金の返済に苦しみ、
銀行が見向きもしなかった経営者ほど
倒産を免れることができたのです。

バブルで懲りた日本の実業界では
お金を借りずに自己資本で事業を運営した人ほど堅実な経営をし、
設備更新をしたり、海外投資に資金を投ずることができたのです。
東京都が出資して設立した銀行が
莫大な融資をこげつかせたのを見てもわかるように、
借金のチャンスが多いことは
産業界の発展を促すわけではないのです。
ですから何かというと
すぐに銀行にお金を借りに駆け込む経営者の方が
信用力のない人たちであって、
バブルがはじけた後も銀行を敬遠して
自力で更生を図った企業家の方が
信頼のおける人たちだったということができるのです。

経済成長の初期と後期では銀行の利用のされ方も違います。
貸入金など当てにせず、自分たちでやりくりする人たちにとって
銀行融資はさして役に立ちません。
それなのに産業界に不足する資金を用立てるために、
金利を政策的に安くするということは
銀行にイージーな金儲けのチャンスを
提供してあげるようなものです。
その結果、銀行が土地の値上げに莫大な資金を融資し、
サブプライム・ローンをきっかけに
世界的な金融不安をもたらしたことは
皆さんが現に経験した通りです。
それでも金利が安い方が産業界が助かると
盲信している人が多いのですから、
景気がなかなか立ち直らないのは無理もありません。


←前回記事へ

2010年1月26日(火)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ