中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3622回
失業問題は日本で最大の社会問題に

いま日本で一番大きな社会問題は何と言っても失業問題です。
ほんの少し前までは失業と言えば、
ヨーロッパが一番で、次はアメリカでした。
高度成長期の日本では、非自発的失業はほとんど皆無に近く、
終身雇用制と年功序列給で、
日本人は一ぺん就職すると定年まで勤めあげるのが常識で、
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と持ちあげられる
日本的経営の長所として讃えられました。

成長期の日本は常時人手不足だったし、
従業員がなかなか辞めないことは会社にとっても好都合でしたから、
一ぺんでも辞めると同業者の間で採用してもらえない風潮は
企業にとっても好都合なことでした。

しかし、企業が定年退職まで、それも年功序列給を維持できたのは
高度成長のおかげでそれだけの収益があったからで、
やがてそれができなくなる時が来るだろう、
年輪を重ねただけで高率の賃金が支給してもらえることも、
退職金を支給してもらえることも
不可能になるだろうと私は予想しました。
と同時に若い人たちに
社会制度に縛られてあッと気がついたら老人になっていて、
自主独立のチャンスを失うことに警鐘を鳴らしました。

はたしてバブルがはじけて産業界がピンチにおち入ると、
先ず既存の雇用制度がなし崩しに崩され、
気がつくと定年前の肩叩きがはじまったり、
正社員が臨時雇いやアルバイトやニートにとって代わられて、
企業によっては派遣社員の方が正社員より多い会社が
珍しくないようになってしまいました。

派遣社員は正社員より支出が多くなるかも知れないが、
支払われた給料はすべて経費として計上されるし、
毎年のように経営者を悩ましてきた昇給や退職金の積立や
ストのトラブルも一切なくなってしまいます。
とりわけ不要になれば契約によっていつでも解約できるので、
作業に支障をきたさなければ、
会社にとってこんなに好都合な雇用制度はありません。
と同時に大不況になると、
これほど国民生活に大きく響くようになるとは、
企業の経営者たちも思い及ばなかったのではないでしょうか。


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2010年2月8日(月)

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