中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3632回
サラリーマン資本主義の誕生

皆さんはいまの日本をどんな社会制度の国だとお考えですか。
産業界全体が国の統制下におかれていませんから、
計画経済の国でないことは確かです。
それなら資本主義の国かというと、
市場経済の国ではありますが、
資本の出し手である株主の発言権はそんなに強くないし、
会社がお金を儲けた場合でも
株主の分け前はそんなに多くはないので、
資本主義の国とは言えません。
それなら企業の運営をしている経営者が実権を握っていて
分配の決定を自分たちの自由勝手にやっているかというと、
会長や社長や並び重役の報酬は新入社員の10倍か、
多くても精々20倍くらいしかなく、
ボーナスに至っては
アメリカの大会社の経営者たちの足元にも及びません。
アメリカが資本主義の総本山なら、
日本は会社社会主義の国じゃないかと言いたくなります。

では民間企業の資本が国によって所有されているのか、
それとも国家権力の支配下におかれているのかというと、
国営企業はホンの僅かしかないし、
上場企業に比べて
無駄遣いが多くていつも批判の対象になっています。
民間企業には必らず創業者がいて、
創業者が身内に相続させることもできますが、
2代目、3代目がちゃんと経営者を勤めることができるかというと、
大抵は肉親が排除されて
自分で株を持たないサラリーマンの経営に変わっています。

サラリーマン上がりの経営者は自分が資本家でもないし、
国家権力の代理人でもないし、
株主の代表者でもありません。
気がついたら創業者や経営者の助手や
代理人をやっていたサラリーマンが
日本を代表する大会社の経営者になって
日本の産業界を動かしているのです。
社会主義体制でも、
共産主義体制ではありません。
私はこうしたユニークな制度を
サラリーマン資本主義と呼んでいます。
サラリーマンあがりの経営者が
不特定株主のお金を預って自分が社長に任命されている間、
経営をする日本独特の社会制度が
日本の国ではいつの間にかできがってしまったのです。
こうしたアングルから日本の国を見たことがありますか。


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2010年2月18日(木)

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