中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3637回
カンバン方式失業が日本に定着する

利益をあげるためには商品の値上げと販売の拡張が必要ですが、
昨今のように業績が思うようにあがらない時は、
コスト・ダウンに目が向います。
コスト・ダウンの中で最も大きな部分を占めているのは、
もちろん、人件費です。

高度成長期は年々、売上げが伸びたので、
人手不足が続き、賃上げと人集めは産業界の常識でした。
しかし、バブルがはじけて倒産がはじまると、
どこの会社でも人件費が大きな負担になって、
いつの間にか年功序列給も終身雇用制も大きく崩れてしまいました。
多くの企業がもっと人件費が安くてすむ海外に
生産基地を移すようになりましたが、
既に設備があって従業員のカットダウンのできない会社では、
賃上げをストップしたり、
正社員をできるだけカットして、
気がついて見たら生産工場でも
派遣社員が工場を動かしているのが珍しくなくなっています。

派遣社員は人件費としては必らずしも
正社員より安くはありませんが、
支出はすべて経費として計上できるし、
昇給もなければ、賃上げ斗争もなく、
退職金の面倒を見なくていい分だけ安上がりです。
しかも仕事がなくなれば、
契約に従って退職してもらうこともできますから、
昨今のように工場が操短に入ればいつでも解雇ができます。

従って最近、問題になっているように、
工場が操短に入れば、
あっという間に失業者が全国に溢れるようになります。
欧米には見られましたが、
経済成長国日本で見られなかった光景が
日本でも見られるようになったばかりでなく、
それが長期化して全国に居座わる気配を見せています。
合理化に企業が力を入れれば入れるほど
失業者がふえる体制が日本の国にも定着しつつあるのです。

トヨタのカンバン方式はコストダウンの代償を
それぞれ取引先に引き受けてもらうことですから、
操短の代償は働いている人に引き受けてもらうことになります。
日本型失業がいよいよはじまったと見ていいのではないでしょうか。


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2010年2月23日(火)

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