中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3660回
株式評論の世界からなぜ姿を消した

株でお金を儲けたかったら、これから陽の当る銘柄で、
まだ人があまり気づいていない株をコツコツと買って、
上げようが、下げようが、
じっとガマンをして持っておればいいのです。
しかし、どの株がこれから陽の当る株で、
いまさして人の気づかない株か、
はたしてどれがそれに当るかは、実際に株価に現われるまで、
誰にもわからないのです。

私が半世紀ばかり前にそうしたやり方に言及した頃は、
株の売買をやっている人に
そうした角度から物を見る人はいませんでしたので、
「成長株」と言っただけで新鮮感があり、
それが株価の位置を大きく変えました。
でもそれが株をやる人たちの常識になってしまうと、
もう株価を動かす力として働くことはなくなってしまったのです。

「知ったがしまい」という株の諺がありますが、
誰でも知っている事柄は
株価を動かすエネルギーにはならないのです。
どちらかというと、新しく上場してくる株は、
上場する前から成長株であるかどうかをたしかめられます。
情報株とか、半導体株は最初から高値で上場され、
株価全体の位置は大きく変わってしまいました。
その上、1株当りの額面を50円に揃えていたのが
500円の物もあれば、1万円の物もあるようになって、
どの株が高いのか、安いのか、
四季報と首っ引きをしないと
わからないようになってしまいました。

私が新しく証券界に持ち込んだ考え方にしても、
それが投資家の常識になっていなかった間は
株価を動かすエネルギーとして働きましたが、
何だ、そんなこと投資の常識じゃないかと言うことになると、
私の出る幕はなくなってしまいます。
ですから私にそれを越える新発見がない限り、
自分の役割は終ったと考えて
株式投資をテーマにして執筆することを一切やめてしまいました。
執筆者として私にはほかにいくらでも取り上げるテーマがあったし、
自分が新鮮さを感じない分野で働く情熱を失ってしまったのです。


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2010年3月18日(木)

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