中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3673回
50年たつと日本国も年をとりました

はじめてマドリッドに行った時、
私の頭の中にはヨーロッパの歴史がぎっしり詰まっていました。
インビンスブルグ・アルマーダという
無敵艦隊の映像も生きていたし、
コロンブスを新大陸の発見に派遣したスペイン帝国の宮廷の
派手やかなイメージも鮮やかに刻み込まれていました。
ですから、泊ったホテルの窓から朝、
勤めに出かけるサラリーマンたちに
昔のどんな面影が残っているか、
言い知れぬ興奮の眼ざしで眺めました。
そうしたら、
日本のサラリーマンとさして違いのない足どりだったので、
「歴史が終われば、その国の人も只の人だな」
と期待はずれに終ったのを、いまもはっきり覚えています。
人生の運不運も盥廻わしですが、
国の盛衰にも同じことが言えるのですね。

このことについては前にもこの欄で言及したことがあります。
ところが、全く似たような動きを
最近の日本でも感ずるようになったのです。
敗戦後の日本は狭い国土に8千万人の人が追い戻され、
資源もなければ、資金もなく、
食糧を自給する能力さえありませんでした。
このままだと、1千万人くらいの人が餓死するだろうとさえ
言われていたのです。

そこから発奮して日本は世界的な工業国にのしあがり、
アメリカに次ぐ富裕国としての地位を築きました。
資源がなければ、資源のある国から買えばよい、
資本がなければ、原料を加工して付加価値を生み出せばいいことを
日本人は実地に証明して見せたのです。
おかげで世界中の列強が植民地を持つ必要がなくなり、
日本人は帝国主義を歴史書の中から追っ払うことに
先鞭をつけたのです。
「お金でワインを買うことができるのなら、
ワインをつくってお金を手に入れることができる」
という経済学の始祖アダム・スミスの新説を
日本人は実地に証明して見せたのです。
世界一の敗戦国から世界一の工業国までのしあがった半世紀の間、
日本は活気に溢れ、日本人は世界中から見上げられる
一等国民に成長しました。
それがどうやら
スペインのサラリーマンの後に続くようになったのです。
そういう具合に見ているのは私だけでしょうか。


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2010年3月31日(水)

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