中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3753回
給料の差よりも人事のパイプに問題が

日本と中国の賃金差が30倍もあった時代に
日本から現地に派遣された社員の給料が
現地で採用した職人たちの100倍もあったことは
珍しいことでも何でもありませんでした。
問題は、中国が工業化に成功して「世界の工場」になり、
人手不足が顕在化して人材の取り合いになると、
どうするのが正しいのかということです。

ホンダのパーツをつくっている下請け工場では、
日本から派遣されている社員の給料が
従業員の50倍であることが
ストの原因であると報道されていますが、
そもそもの始まりは100倍でも珍しくなかったのですから、
環境が変わればどう対処するのが摩擦を軽減することになるのか、
考慮すべき時期に来たということです。

現に私の周囲の進出企業でも、
またうちの北京のマンションに住んでいる
日本企業のスタッフの方々も同じ問題を抱えています。
私のところで働いている若い日本人は
一流企業から派遣されている日本人に比べると、
うんと待遇は低いのですが、
それでも現地採用の中国人の5倍や6倍は収入があります。
うちの場合は物価の差を考慮して
日本とほぼ同じ水準の生活のできる給与ということにしていますが、
家賃のような会社の支出が認められる手当は
原則として会社に支払ってもらうようにしています。

ですから問題は給料の差よりも、
中国人のスタッフに能力に応じたポジションがあたえられているか、
賃金が年々上昇する環境の中で
従業員に納得してもらえるだけの調整が行われているか、
ということに盡きます。
大抵の進出企業は、
経営陣と現場とのパイプは10年前、20年前のままで、
経営陣はちゃんと通じていると信じているけれども、
実は詰ったり、破損していたりして、ストでも起らないと
そのことにすら気がつかないことが多いのです。
言葉が通じないということもありますが、
絶えず人事の刷新をやらないと、
情報の流れがストップするところに来ていることが多いのです。


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2010年6月19日(土)

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