中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3752回
派遣社員の給料は現地採用の100倍

私が日本企業に中国進出をすすめた今から17、8年前は、
日本の平均的な給料は大体、中国の30倍ほどでした。
ですから同じ労働者なら
日本の30分の1でもおかしくはありませんでした。

そういうところに工場をつくるということは、
日本での生産を排除することになりますから、
どこの会社でも
工場ごとそっくり移すことまで考える人は先ずありません。
同じ会社の中でも、人手がかかりすぎて合理化の難しい
労働集約的な部門だけを切り離して向うへ移そうと考えます。
私はそんなことをやるよりも、
いっそ先進的な作業分野も労賃の安いところに移して
一挙にコストダウンを図った方が
将来のためになると主張しましたが、
私のアドバイスに耳を貸す人は先ずありませんでした。
日本では既に人手不足は避けられない環境にありましたが、
先の先まで考える人なんて滅多にいるものではないのです。

かくて機械化、省力化の難しい仕事だけが
先ず人件費の安い国に移ります。
向うに行くと500人、1000人と人はいくらでも集まりますが、
工場で働いたことのない人ばかりですから、
給料は先ず日本の職工さんの30分の1、あるいはそれ以下で、
とりあえず職場の訓練からはじまります。

一方、日本から派遣された人は、
現場で指導する人も平の職工ではなくて、
課長か、あるいは定年寸前のベテランですから、
給料だって初任給の倍から3倍になってしまいます。
それに更に現地派遣手当も加えると、
50倍どころか、100倍になったとしても珍しくありませんから、
日本からの派遣社員10人の給料が
現地採用工員1000人分に相当したとしても、
不自然なことでも珍しいことでもないのです。

ほとんどの海外進出企業は
こういう給料構成からスタートしています。
現地企業が赤字の間は
派遣社員の給与を本社が負担することもありましたが、
現地工場が軌道に乗れば、
現地工場が負担するようになるのも自然の成り行きです。
何もホンダだけがおかしなことをやったわけではないのです。


←前回記事へ

2010年6月18日(金)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ