中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3876回
年功序列給も今や天然記念物の時代に

ほんの一世代前は一旦、就職した会社を辞めても、
新しい就職先がなかなか見つかりませんでした。
途中で会社勤めを辞めるような人は
どこの会社も喜んでやとってくれなかったからです。
とりわけ同業者は競争相手から人をとることを嫌ったので、
1つの銀行を辞めた人を
別の銀行が採用することは先ずありませんでした。

ですからこの仕事は自分に合わないと気づいた人でも
なかなか仕事を変えることができません。
会社の方でも、仕事に慣れた従業員を引き止めるためにも、
また愛社精神を持って働いてもらうためにも、
長く勤めればその分、給料を上げる
いわゆる年功序列給を採用していました。
そのために高度成長時代の日本の企業は雇用の流動性が低く、
それが日本的経営の長所として
欧米の経済学者たちの賞賛の的になったことがあります。

しかし、それは一方的な物の見方で、
年功序列給は労働力の生産性と比例しないので、
企業に余裕がある間は何とか対応できましたが、
コスト競争が激甚になると、
たちまち企業の重荷になってしまいます。
日本国内の賃金水準が高くなりすぎて、
コストダウンのために企業の海外移動がはじまると、
年功序列給はやがて批判の対象になり、
バブルがはじけて日本の産業界が空前のピンチに見舞われると、
肩叩きや定年前退職の制度に
とって代わられるようになってしまったのです。

日本人の愛社精神は合理化がすすむにつれて
天然記念物並みの扱いを受けるようになり、
「入社したからには少くとも3年はガマン」するどころか、
3ヶ月もたたないうちに退社する若者が
珍しくなくなってしまいました。
退社した若者がすぐに次の職を探がすどころか、
家でゴロゴロしていても食べるには困らない時代になったので、
自主的失業者でも
失業保険をもらえる時代になってしまったのです。
これも環境がもたらしたものですから、
それが気に入らないなら日本から出て行けばいいじゃないか
ということになってしまったのです。


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2010年10月20日(水)

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