中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4002回
マスコミに取り残される心配のある時代です

この半世紀に私たちの社会生活に
一番大きな変化をもたらしたのは何と言っても
情報伝達の手段の進歩ではないでしょうか。
新聞しかなかったのが
私の子供の頃に放送局がもたらされたかと思ったら、
戦後、私が香港から東京に戻って小説家を志した頃に、
はじめて日本にテレビ局がつくられました。

テレビは1台10何万円もして、
一般民間人の手の届かないところにあったので、
新橋の駅前の広場に無料で見られるテレビが設置されていて、
そこにテレビを見たい人が黒山のように集まっていたのが
いまも頭の中に残っています。
まだ皆の給料が1万円もしていなかった頃でしたが、
秋葉原に行くと業者が組立てた手づくりのテレビが
5万円で売られていたので、奮発してそれを買って帰って、
相撲を見て娯んだことがあります。

その頃だってテレビがまさか全国的に普及して、
一家に1台どころか、
一室に1台になるとも思っていませんでしたが、
日本国中の人がテレビを覗き込んでいるのを見て、
口の悪い評論家の大宅壮一さんが
「一億白痴化運動だ」と酷評したのを
「なるほどそういう見方もあるんだな」と
印象に残ったことがあります。
それが半世紀たって見ると、
パソコンどころか、携帯電話が
世界中ボルネオからネパールからマダガスカルまで普及して
情報伝達の手段を一変させてしまいました。

エジプトに政変が起ったのも、
イエメンの大統領が変わる話だって、
1人に1台パソコンが普及して、
情報の統制が権力者の思うままにならなくなったからだと
言われていますが、
政治だけでなく私たちの生活に最も大きな影響をあたえ、
今後も更に大きな変化をもたらすのは、
情報伝達の手段の相継ぐ進歩ではないでしょうか。

私だけではないでしょうが、ちょっと油断をしていると、
時代の尖端を読む自信を持っている人だって
置いてけぼりをくらう心配のある時代を私たちは生きているのです。


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2011年2月23日(水)

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