中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4172回
空前の円高でも日銀が対応できないわけ

1ドル100円でも商売はきびしいのに、
1ドルが80円を割ると、
輸出産業の大半が赤字に転落します。
今から17年前に書いた「アジアの勃興」という本の中で、
「やがて円高になって輸出が困難になり、
輸出産業の3分の1が海外に移転するようになるだろう。
でもそれを日本のピンチと考えないで、
日本人の活躍する舞台が世界に拡がったと思って下さい」
と述べていますが、その通りのことが
そのものズバリでいま起っていると言ってもよいでしょう。

新聞やテレビを見ていると、
「うちの会社は1円円高になっただけで、
年に25億円も減収になります」
と嘆息している記事を見かけますが、
日本を代表するトップ企業になると、
それどころの騒ぎではありません。
その上に東北大震災の影響も加わりますから、
踏んだり蹴ったりが続いて、国としても大減収に見舞われます。

ですからこうい時は、
政府が先頭に立って円高にブレーキをかけるべきだと思うのに、
日本では「為替レートは自然に任せるべきだ」
と考える政治家が多いと見えて、
中国政府がアメリカの要求にガンとして応じないのとは逆に、
「自然の成り行き」に任せています。
「自然の成り行き」とは貿易収支の動きではなくて、
今は投機資金の方が貿易収支よりうんと大きいのですから、
投機資金の意のままでよろしいということになります。

ですから、アメリカの財政状態が悪化したり、
アメリカ経済の恢復が遅れ気味になったら、
それが円高を誘発して、日本経済が挙げて
その影響を受けることが避けられなくなります。
どうしてそういうことが起るかというと、
日本の政治家は二世、三世が多くなって
殿様の上に「若」ではなくて
「馬鹿」がついてもおかしくない人がふえたのと、
政治家の秘書あがりがそれに加わって、
いずれも経済に明るくないことが
原因しているのではないでしょうか。
お金をつくる人ではなくて、
お金をもらう人の集団になってしまったのです。


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2011年8月12日(金)

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