中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4335回
国境がなくなって世界は1つに

いま私たちの住んでいる環境で一番大きな動きは
国境を囲む塀がだんだん低くなって、
世界が1つになって行くことではないでしょうか。
ほんの少し前まではそれぞれに国があって、
国に守られているおかげで国民の生活が成り立っていました。
ですから一番大切なものは国であり、
国のおかげで生活が成り立っているのだから、
どこの国でも愛国を優先させる風潮が珍しくありませんでした。

でも愛国の対象になっている国も
時代によって大きな移り変わりがあります。
いまはニューヨークに行っても、ロンドンに行っても
日本人会しかありませんが、
私の子供の頃は台湾にいる日本人の間には
熊本県人会もあれば、長崎県人会もありました。
そして、更に50年もさかのぼると、
日本の国には国が300以上もあって、
「お国はどちらですか」ときかれたら、
「ハイ、土佐です」とか「ハイ、薩摩です」という答えが
返ってきたのです。

明治維新の歴史を読むと、
大政奉還に賛成した藩もありましたが、
徳川家の肩を持って国ごと棒に振ってしまった
会津藩のような保守派もたくさんあったのです。
そういう目で見ると、これからも新しい国づくりもあれば、
古い国がお互いに国境の守りを低くして
自由に往き来のできるユーロのような動きも続きます。

むろん、それと逆の動きをする人もグループもありますが、
このまま人や商品やお金が自由化すれば、
そのうちに国は消滅して自治体の一種となり、
「世界は1つ」という日が来るのではないでしょうか。
そうなると、いま愛国運動の最先端に立っている人たちは
かつての白虎隊のような運命を辿るのではないでしょうか。

私が正月号の「週刊ポスト」で、
日本人は世界という拡がった土俵に出て
活躍したらどうですかとすすめたのは
そうした時代の動きを念頭においた善意のアドバイスなのに、
「お前こそ日本から出て行け」という怒声が多いのに
一驚してしまいました。
明治維新の時もきっとそうだったのでしょうね。


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2012年1月22日(日)

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