| 第3回拒絶理由は絶対的な基準ではありません
 特許の拒絶理由は、特許を受けられる要件の裏返しとして特許法第49条の各号に列挙されているのですが、
 審査官はその審査にあたり、
 出願がこれらの拒絶理由に該当しないかどうかを真剣に審査します。
 決められた要件については厳密に審査するという意味においては、
 日本の審査レベルは世界的に見ても均質である
 (審査官によるムラが少ない)と言われています。
 では、要件として定められているこれらの拒絶理由が絶対的なものかというと、
 決してそうではありません。
 もちろん、新規なものでなければならないとか、
 進歩性を有していなければならないといった
 変わりにくい本質的な部分もあるのですが、
 そうでないところは法改正や運用の変更に伴って
 流動的に変化します。
 なぜ変化するのかというと、その時代時代の要請を反映させるからです。
 例えば、昭和50年の一部改正までは、医薬や化学物質の発明は、
 「公序良俗に反するもの」と
 同列に取り扱われて特許を受けることができませんでした。
 当時は日本のこれらの産業分野における技術開発力が
 諸外国に比べて低かったため、
 外国からの出願を阻止することが狙いであったと言われています。
 これらの流動性は、特許法をはじめとする産業財産権法(特許法の他に、実用新案法、意匠法、商標法があります。
 ちなみに「産業財産権法」という法律はありません。)が、
 本質的に産業立法であるということに起因しています。
 つまり、極端な言い方をすれば、
 日本の産業の発達に都合の良いように
 法律や運用が都度変更されるということです。
 そして、産業の発達を促進する様々な側面を捉えて、特許法の他に、実用新案法や意匠法や商標法が制定されています。
 例えば、特許で押さえるまでもない小発明は
 実用新案として保護しようとか、
 工業製品のデザインを意匠として保護しようとか、
 特定の業者を識別するためのマーク(標章)を
 商標として保護しようといった具合です。
 もちろん、これらの法体系で完全ということではありません。
 時代の変化に対応すべく、日々改善がなされています。
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