知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第4回
商標の保護対象だけは別物です

我が国の産業財産権法には、
特許法、実用新案法、意匠法、商標法があります。
それぞれの法域において保護される対象は、
特許法であれば発明、意匠法なら工業デザインと、
終局的には産業の発達を目的として、
それぞれ異なる保護対象を規定しています。

もし、これらの保護対称の中で、
一つだけ異色のものを挙げなさいと言われれば、
それは間違いなく商標法の保護対象である「商標」です。
他の、発明(特許法)や考案(実用新案法)や意匠(意匠法)は、
いずれも新規な創作物であるという点で
根幹的に共通するのですが、
商標法の保護対象は
これらと全く別の角度から捕らえておく必要があります。

例えば、「ソニー(SONY)」は、
AV機器をはじめ、ゲーム機や映画事業などを
全世界規模で展開する企業を指す著名な登録商標ですが、
保護されているのは
「ソニー(SONY)」というマークそのものではなく、
このマークを使用することによって蓄積した業務上の信用なのです。
分かりやすい例を挙げますと、
ある著名商標が全く使用されなくなって何十年も経過したとします。
そうすると、世の中の人は
その商標が何を指し示すのか忘れてしまいます。
その後に、別の人がその商標を使用しようと思って
商標登録出願すると、
他に拒絶理由がなければ登録されるのです。
少なくとも、大昔に著名商標であったと言う事実によっては
拒絶されないということです。
これは、例えば、
一度出願されたものについて再度出願しようとしても
絶対に登録されない発明や考案や意匠とは根本的に異なる点です。

そして、マークに業務上の信用が蓄積しているということは、
需要者(消費者)がそのマークを見た瞬間に、
「これは有名処の何がしの商品だ」
と判別できることを意味します。
商標の世界においては、
これを「自他識別力を有する」というのですが、
こうした自社の商品を同業他社の商品と区別できる状態に保つこと、
言い換えれば、他人に類似マークを使用されて
需要者に混同を生じさせることがないよう
取引秩序の安全を図ることが商標法の重要な役割といえます。


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2007年8月28日(火)

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