知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第11回
商標の希釈化にご注意

産業財産権の保護対象の中で
商標は異色の存在だということは既に述べました。
商標の保護対象は「マーク(標章)」そのものではなく、
そのマークにくっ付いた「信用」が保護されます。
日本においては、商標登録出願時に、
必ずしも出願にかかる商標を
使用していることを義務付けられてはいないのですが、
当然のこととして将来の使用が想定されており、
例えば、登録後一定期間(3年)使用していないと
「不使用取消審判」によって登録が取り消されてしまいます。

では、登録後使用し続けていれば安泰なのかというと、
実は、そう簡単な話では済みません。
むしろ使用して著名になればなるほど
日頃の注意が必要になってきます。
それが、商標の希釈化の問題です。

皆さんもきっとご経験があると思うのです。
宅配便のことをついうっかり「宅急便」と言ってしまったり、
化学調味料のことを「味の素」と呼んでしまったり、
セロファン製のテープのことを
ずっと「セロテープ」だと思っていたことってありませんか?
念のために申し上げておきますが、
「宅急便」も「味の素」も「セロテープ」も全て登録商標です。
商標権者からしてみれば、
一般的な名称のつもりで使用することは
絶対に止めて欲しいところです。
もし消費者が
これらの登録商標を一般的な名称のつもりで使い続けると
本当に普通名称化してしまい、
これら登録商標の「自他識別力」が失われてしまいます。
そうすると、これらの名称は誰が使っても良いことになり、
せっかくの商標登録が台無しになってしまいます。
「真似をしないように」というレベルではなく、
商標登録存亡の危機なのです。

ですから、例えば、
商標権者である企業は、
自分のところの登録商標が
安易に普通名称として使用されていないかどうか、
常々目を光らせています。
もし、そうした動きがあれば、
直ちに使用した(している)者に警告状を送付して、
その使用を止めさせます。
このためのコストは、年間相当な額になると聞いています。

せっかく商標権を取得したその後にも継続的に手がかかるなんて
割に合わないなどと思わないで下さい。
自らが築いたブランドを守る商標権者にとっては安い経費なのです。
登録商標が著名になると、
そんな苦労も厭わず守りたいということです。


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2007年9月13日(木)

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