知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第12回
工業デザインの保護

特許発明や商品ブランドと共に、
産業発達のための重要な要素と考えられているのが
工業デザインです。
この工業デザインが
意匠法の保護対象であることは既に述べましたが、
まずは皆様の身近なところから考えてみたいと思います。

「デザイン家電」という言葉を
お聞きになったことがあると思います。
デザイン家具はずっと昔から認知されていますが、
家電にも熱心にデザイン上の工夫が凝らされて、
消費者に対する有効なアピールポイントになっているようです。

家電と言えば、その昔、
日本で三種の神器と言われた時代のテレビや洗濯機や冷蔵庫は、
機能そのものが画期的であったためか、
デザイン的にはお世辞にもカッコよいとは言えませんでした。
それはそれで良かったところがあって、
消費者も、さほど気になりませんでした。
実は、昭和26年に松下幸之助氏が米国視察をされた際、
帰国後に開口一番「これからはデザインの時代や」とおっしゃって
社内にデザイン部門を設立されたのですが、
業界全体としては技術が優先する時代がずっと続きます。

しかし、高度成長期を終える頃には、
こうした家電も一括りに「白モノ」といわれるようになって、
技術的にも機能的にも頭打ちになっていきました。
需要も買い換えが中心ですので、
なかなか故障しない優秀な家電製品を製造してきた日本企業は、
白モノ部門に手をこまねく状況になったのです。

そこで、「デザイン家電」という売り方が
脚光を浴びるようになります。
「デザイン家電」という言葉は、
巷で使い回され過ぎて重みがなくなってきたかもしれませんが、
本来の意味は、製品価値の中でデザインの占める割合が
「圧倒的に高いもの」を指すと思います。
つまり、技術や性能が頭打ちになった段階の次を行く、
新たな付加価値が主体となった製品ということです。
近年好調が続く米アップル社のiPod(登録商標)が好例です。
聞くところによると、
iPod自体は実は「ローテク」の塊で、
メモリやチップも
韓国や台湾のメーカーから大量に買い付けることで
コストを低く抑え、
50%前後の粗利を確保できているそうです。
でも、あのデザインを見ると、たまらなく欲しくなりますよね。

同じ機能ならば良いデザインのものを。
豊かで心地よい生活に対する人々の欲求は、
そう簡単になくなったりはしませんので、
ここにも無から有を生む有望な領域が存在します。


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2007年9月15日(土)

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