| 第13回意匠は物品とデザインとのワンセットです
 前回、ざっと工業デザインの重要性についてお話しましたが、意匠法が想定する「意匠」は、
 世間一般で使われているところの「意匠」とは
 異なる点があると思いますので、少しご説明します。
 相違点は、意匠法上の意匠が必ず「物品」とのセットで取り扱われるという点です。
 つまり、そのデザイン(形状、模様若しくは色彩)が
 如何なる物品に対して用いられたかという観点が重要になります。
 デザインそれ自体が、
 単独で意匠として観念されることはないのです。
 世間一般では、単にデザインそのものを指して
 意匠ということが少なくないと思います。
 例えば、意匠法では、物品「洗濯機」についての意匠としてこれこれ、
 物品「万年筆」についての意匠として云々
 といった具合で意匠を認定します。
 ですから、意匠法において意匠が類似する/しないは、
 「物品」と「その物品にあらわれた美的外観」との
 両面で判断します。
 つまり、外観が類似していても、
 物品が異なれば両意匠は非類似となるのです。
 さらに例を挙げましょう。ここに、万年筆とボールペンがあるとします。
 何れもキャップ付きで外観上はほとんど区別がつきません。
 しかし、物品が「万年筆」と「ボールペン」とで異なります。
 果たして両意匠は類似といえるでしょうか?
 この場合、物品「万年筆」と物品「ボールペン」とは、
 用途及び機能が共通するから類似の物品であるという見方をします。
 したがって、両意匠は類似です。
 次に、特徴的な模様をあしらったネクタイが好評の専門店があったとします。
 この模様を見れば、
 誰もが「あのお洒落な専門店のネクタイ!」と分かるくらい
 短期間ですっかり有名になっています。
 もちろん、この「ネクタイ」は意匠登録されています。
 しかし、別の会社がこの特徴的な模様をそっくり真似て、
 これを「カバン」にあしらった商品を販売し始めた場合、
 残念ながらこのネクタイの意匠についての意匠権に基づいて
 カバンの販売を差し止めることはできません。
 物品が「ネクタイ」と「カバン」とでは非類似だからです。
 両物品は用途も機能も異なるので、
 類似というにはかなり無理があります。
 非類似の意匠に対しては意匠権を行使することができません。
 別の手立てが必要です。
 極端で少し意地悪な例だったかもしれませんが、現行の意匠法(2007年9月現在)における
 「意匠」の特徴をおさえていただければと思います。
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