知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第14回
アイデア1つで億万長者!?

今回は、
シンプルなアイデアで大きく儲けるシミュレーションを行います。
発明は実在のもので、
実際にこの発明に基づいて
多大な実施料が支払われたと聞いています。
しかし、後年、尾ひれ背びれがついた訴訟が複数提起されており、
これら一連の事件をつぶさに追うことは煩雑ですので、
ここでは本筋だけを取り上げた
「事実に基づいたフィクション」ということで
お読みいただければと思います。

問題の発明は、ある登録実用新案です。
実用新案の場合は発明ではなく「考案」と呼びますが、
ここでは特許発明に対する
「小発明」と認識していただければ結構です。
この実用新案の請求の範囲(特許請求の範囲に対応)には、
およそ次の通り記載されていました。

A.電話機に差し込むことにより
  電話がかけられるテレホンカードにおいて、
B.このカード本体の一部に、
C.カードの表裏の確認並びに
  電話機に差し込む方向を指示するために
D.切欠部、穴部或は押形部などからなる
  表裏並びに差込方向の指示部を設けてなるテレホンカード。

これは、
ずばりテレホンカードの「切り込み」のことです(下図ご参照)。
最近テレホンカードは少なくなりましたが、
バスカード等のプリペイドカードには、
まだこの切り込みがあるはずです。
実は、この出願には当初から素晴らしい思想がありました。
それは、
「目の不自由な方にとっても挿入方向を間違わずに
確実に使っていただけるテレホンカードを提供する」
というものです。

上の請求項には表れていませんが、
この「切り込み」(指示部)は、
カード短辺の中央から少しずれた位置に設けたことが
特徴となっています。
つまり、カード表面を上向きにしたときに
挿入方向から見て左寄り(又は右寄り)に
切り込みがくるということが予め分かっておれば、
目をつむっていても挿入方向を間違えることはありませんね。

このようなカードが
世の中で一斉に採用されたらどうなるでしょうか?
テレホンカードだけを取ってみても
最盛期には年間数億枚発行されたそうです。
そうすると、1枚の販売につき
たった「1円」の実施料を設定しただけでも・・・。
相当な財産が築けそうです。

話を単純化しましたが、
この事例は無から有を生み出すヒントを与えてくれます。


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2007年9月20日(木)

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