知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第15回
実用新案は特許とどう違う?

実用新案という言葉が度々出てきていますので、
ここで特許との違いをご説明します。
日本の実用新案制度は、
ドイツの制度をモデルにして明治期に導入されました。
当時のヨーロッパにおけるドイツは、
近代化の点で大英帝国やフランスに遅れをとっていました。
したがって、特許政策においても実用新案制度を導入し、
本来特許にはならない小発明であっても
これを保護することにより、
産業の発達に少しでも勢いをつけようとしたものと思われます。
日本でも、特許制度のみでは
外国勢にばかり権利を取得されてしまうおそれがあったため、
実用新案制度は、国内外の技術レベルの不均衡を是正するという
重要な役割を担っていたと言えます。
以上が歴史的な背景です。

次に、両制度上の相違点を見てみましょう。
まず、実用新案の保護対象である「考案」は、
「物品の形状、構造又は組合せに係るもの」
でなければなりません(「基礎的要件」といいます)。
例えば、コンピュータプログラムは
実用新案では保護されません(特許では保護されます)。
また、権利になる過程で、
特許の場合には発明水準の審査がありますが、
実用新案の場合には方式的な審査はあるものの、
考案の技術水準の審査なしで登録されます
(「無審査登録主義」といいます)。
では、でたらめな内容を出願しても登録されるのかと言われれば、
原則登録されます。
もっとも、物品の形状等でないものを出願した場合には
「基礎的要件」違反が明らかですから、これは却下対象となります。
つまり、基礎的要件を満たしていれば、
登録の段階で類似の先行技術が問題にされることはありません。
しかし、権利行使時には
権利者自身がその権利の有効性を立証する責任を負いますので、
でたらめな出願は本人にとっての利益が何一つありません。
さらに、こうした義務を果たさずに安易に権利行使した場合には、
相手方に与えた損害を賠償する責任まで負わされます。

他には、権利期間が「出願日から10年」と短いです
(特許は出願日から20年です)。
また、出願から登録までの期間は特許に比べて短く、
出願から半年程度で登録されることも特徴です。
特許の場合ですと、通常で4〜5年、
目一杯努力しても1年を切れるかどうかでしょうか。
その分、実用新案の出願費用や権利維持費用は低廉です。

そうすると、物品の形状等に関する簡単な小発明で、
早く権利化して安く済ませたいといったときには、
一応、実用新案登録出願が考えられます。
ただし、権利行使時の負担を覚悟しなければなりません。


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2007年9月22日(土)

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