知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第16回
実用新案は使える?

実用新案登録出願の一例として、
「クリスマス用ケーキの包装容器」があります。
「包装容器」は物品の形状に係るものですし、
特許を取得するほどの高度な技術レベルでないとしても、
その形状が考案として優れた点を有する場合があります
(中身を美しく見せる工夫がされている、
保存効果に優れているなど)。
そして、クリスマスという実施時期が明確なため、
出願後早期に権利化しておきたいケースと言えます。
さらに、必要な保護期間も10年もあれば十分で、
その分費用を抑えたいといった要望が想定されます。

しかし、前回もご説明しましたように、
現在の実用新案制度は、無審査登録制を採用していますので、
登録されるまで
その出願に係る考案についての新規性、進歩性は判断されません。
これらは権利行使時の高度の注意義務として、
権利者に法律上課せられているのです。

まず、権利行使時には、
特許庁に対して
「実用新案技術評価」を請求しなければなりません(措置A)。
これが実質的な考案の実体審査なのですが、
現在の実用新案法では、
出願された案件全てについて実体審査を行うことは
効率が悪いとの考えから、
登録後必要があれば
権利者側から技術評価の申請をさせることとしているのです。

次に、自らも登録実用新案の有効性についての
調査や検討をする必要があります(措置B)。
上記「実用新案技術評価」は、
文献を中心にした調査しか行われないため、
文献には載っていない
過去の実施事例等についての漏れがあるかもしれないからです。
この場合、弁理士等の専門家にも調査依頼することが望ましいです。

以上の措置A及びBを完了してはじめて権利行使の準備が整います。
もし、これらの準備が不十分な場合は、
例えば、権利行使をしようとして相手に警告した後に、
相手方による無効資料提出等により登録が無効にされると、
自らに過失がないことを立証できない限り、
相手方に対する損害賠償責任が権利者側に発生します。
無過失の立証責任が権利者側にあるのです。
自己に過失がなかったことを立証できれば
その責めを負わないこととなっていますので、
そのため上記措置A及びBが必要となります。

平成16年改正により、
実用新案登録後に特許出願への変更もできるようになりましたが、
現段階では、権利行使の可能性があるならば
最初から特許出願しておいたほうが良さそうです。
もっとも、「守る」という立場に徹すれば、
登録実用新案表記が行えるなどのメリットはあります。


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2007年9月25日(火)

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