知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第29回
そこに表現がある限り・・・著作物とは?

小さな子供が粘土で作った象さん自体は、
著作物として保護されることを前回申しました(第28回ご参照)。
この場合、あえて登録の必要はありません。
著作権は創作された時点で権利が発生します。
著作権法は、特許法などの産業財産権法とは異なり、
文芸的、学術的、芸術的に表現されたものを
「文化の発展」のために保護することを目的としており、
改まった申請手続きがなくとも
創作されたものにはその時点で保護を与えていきましょう、
という立場をとっているのです。

ところで、著作権法の保護対象である著作物は、
「思想又は感情を創作的に『表現したもの』」となっています。
著作物と言われて皆さんがすぐにイメージされるものとしては、
小説や音楽、絵画に彫刻などが挙がってくると思いますが、
実際これらは全て、文字や音、製作物、造形物として
「表現された」作品になっています。

少し復習になりますが、特許や実用新案も、
明細書や図面といった形で書類に表現されます。
しかし、その保護対象の本質は、
発明や考案といった目に見えないアイデアであって、
明細書に記載された事項や図面そのものではありません。
意匠登録にしても同じです。
意匠登録出願の際には、
保護を求める意匠を現した図面を提出するのですが、
図面が保護されるわけではないのです。
あくまで図面等に現れた意匠の外的美観です。

一方で、著作物の場合には、
頭の中で
どんなに素晴らしいイメージやストーリーを考えたとしても、
これら自体は保護の対象とはなりません。
実際に何らかの形で「表現されて」はじめて、
その表現されたもの自体が保護の対象になるのです。
何がどう違うのか、少し混乱されるかもしれませんが、
法が保護しようとして狙っている対象が、
根本的に異なる点は覚えていただいて損はありません。

もともとは工業デザインとしての意匠でありながら、
芸術的な価値が認められて
著作物であると判断された裁判例もいくつかあります。
工業デザインといっても、
「応用美術」の領域に入るものもありますので、
美術と実用デザインとの境界が曖昧になってくるのです。
その結果、実用デザインとしての意匠が、
「思想又は感情を創作的に『表現したもの』」にも
該当してくる場合があります。

例えば、こうした応用美術品が、量産品としての意匠だけでなく、
著作物とも見ることができるとした裁判例に、
「博多人形」と「仏壇」があります。
いずれも量産された実用デザインとしての枠を越えて、
人間(作者)の感情表現、美術表現が現れていると言われれば、
なるほどと思えるところがありますね。


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2007年10月25日(木)

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