知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第31回
『阪神優勝』を考える

今年の阪神タイガースは、
シーズン終盤まで巨人や中日とともに優勝争いに加わりましたが、
今から4年前の夏、
星野監督(当時)が率いる阪神タイガースも優勝を目指して
大変な盛り上がりを見せました。
優勝マジックが点灯すると、
記念セールやグッズ販売等の準備がいよいよ本格化するわけですが、
同時に『阪神優勝』が
球団とは無関係の男性によって
既に商標登録されていることが判明し、
阪神球団自身がこの文字を使用できないかもしれないということで、
これまた大騒ぎになりました。ご記憶の方も多いと思います。

この『阪神優勝』は、
結局、球団側による無効審判請求が認められて無効となりましたが、
阪神球団自身は、この男性による商標登録出願よりもずっと前に、
「Tigers」や「HANSIN/Tigers」、
「阪神タイガース」など多数の商標登録を受けていました。
それにも関わらず、『阪神優勝』となってしまうと、
なぜか登録されてしまったのです。

しかも、当時の新聞や雑誌などで
ご覧になられた方もいらっしゃると思いますが、
この商標は横縞の図柄を含む商標であり、
ちょっと野球をかじったことのある人であれば、
阪神タイガースを連想してしまうようなデザインになっています。
2002年3月に出願されて、
その年の暮れには早くも登録されています。
問題となった当時は専門家の間でも議論が紛糾し、
球団と無関係な者にこのような登録及び使用を認めてしまうと、
消費者が阪神球団と何らかの関連があるものと
誤認してしまうから問題だと指摘されていました。
個人的には、「巨人優勝」とした場合には
絶対に登録にまで至らなかったのではないかと思います。
「阪神」とした場合には、
単なる地域を指し示す場合もあるから
必ずしも阪神タイガースにだけ結びつくものではない、
とは球団側に無効を請求された権利者(当時)の言い分です。

指定商品は、当時の分類で「被服、ガーター、履物」、
「遊戯用器具、おもちゃ、人形」などでしたが、
阪神球団自身も
これらの指定商品で登録を受けている商標もありますので、
『阪神優勝』が登録されてしまった理由は、
やはり『阪神優勝』の表記自体が「阪神タイガース」とは類似せず、
しかも需要者の間でも混乱しないと判断されたようです。

結局2003年12月に無効になりましたが、
一時は実際に登録された『阪神優勝』、
いま改めてご覧になってどう思われますか?


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2007年10月30日(火)

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