知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第32回
今度は逆に訴えられます

『阪神優勝』が無効にされるまでの経緯は有名ですが、
その後の顛末までご存知の方は
意外と少ないのではないかと思いますので、ご紹介いたします。

球団と無関係であった男性(以下、「男性」とします)によって
出願され登録を受けた『阪神優勝』を、
この男性は、球団から
正式には承認されていない業者に対して使用許諾し、
許諾を受けた業者は『阪神優勝』のロゴを使った靴下などを
2003年の7月頃から販売し始めました。

この年は、阪神タイガースがリーグ優勝しましたので、
熱狂のうちにグッズは好調な売れ行きをみせ、
業者さんは追加の発注を行い、
阪神がリーグ優勝を決めた9月頃までには、
在庫の約4割が捌けたそうです。
そして、残りの在庫は翌シーズン前に
キャンプ地周辺等で販売する予定だったとのことでした。

しかし、前回にも申し上げた通り、
2003年12月に『阪神優勝』の登録が無効になってしまいましたので、
この業者は、信用が失墜し在庫を処分できないとして
男性側に商品の引き取りを要求、
男性側がこれを拒否したために
損害賠償を求める訴訟が起こされました。

この訴訟は、大阪高裁まで争われて、
結局業者さんが逆転勝訴ということになりました。
1審では「商標登録は常に無効となる危険を有している
(ので、業者も相応のリスクを負担すべき)」として
業者の請求を退けていたのですが、
高裁では、「阪神球団から警告を受けた男性が、
業者にロゴが使えなくなる可能性を伝えなかった」ことを重くみて、
男性側に100万円の支払を命じる判決に至りました。

賠償命令額は、近年の特許訴訟などに比べると少額の部類ですが、
今回の一連の事件は、
出願人がどういった意図で
権利化しようとしているのかが問われる事件だったと思います。
自分で一からブランドを立ち上げるならともかく、
今回の男性側は、阪神タイガースの信用(ブランド)に
タダ乗りしようとしたと言われても仕方ない事件でした。

一昔前には、商標ブローカーとか
商標ゴロと言われた人達が跋扈した時期がありました。
日本の商標法も改正を重ねて、
こうした人達にとっては相当やりにくくなったようですが、
法律のスキマといいますか境界線を狙ったトラブルは、
今後も形を変えて起こってしまうのかもしれません。


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2007年11月1日(木)

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