知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第34回
『がんばれ日本』と『がんばれ!ニッポン!』

類似した商標が
一見重複しているかのように登録されていて
もめてしまうことは、数え切れないほどありますが、
それがどうやって調整されるかを知る意味で、
もうひとつ事例をご紹介します。

名前をお聞きになったことがある方もいらっしゃるかと思いますが、
登録商標「がんばれ日本」事件です。
商標権者は、かの有名なドクター中松氏です。

「がんばれ日本」と言えば、そうです、
JOC(財団法人日本オリンピック委員会)及び
その協賛団体が使用している
「がんばれ!ニッポン!」が有名ですね。
実は、ドクター中松氏の「がんばれ日本」は、
指定商品を「印刷物」として、
JOCの登録前の平成9年に登録されていました
(もっとも、JOCは中松氏の出願前から
「がんばれ!ニッポン!」を使用してきたと主張しています)。

これに対し、JOC側は、
ドクター中松氏の登録商標が未使用のままであるとして、
不使用取り消しを請求し、特許庁もいったんは取り消しを認めます。
しかしながら、控訴審(東京高裁)では、
ドクター中松氏が発行していた個人的な会報の題号に、
「フオルッアジャパン」という文字を小さな文字を上段に、
「がんばれ日本」の文字を下段に大きく表されているのを
登録商標の使用であると認めて、
特許庁の取り消し審決を差し戻す判決を言い渡しました。
ところが、この会報の商品性
(個人的な会報が商品としての「印刷物」に該当するか否か)が
最高裁まで争われ、
結局、ドクター中松氏が発行していた会報は、
商品性のない印刷物(無償配布物)であるので
商標の使用とは認められないと判断されました。

当時、世間を騒がせたのは、
「がんばれ日本」の登録によって、
「がんばれ!ニッポン!」の使用が制限されることが
ありうるかどうかということでした。
JOCのみならず、協賛会社もポスターにこの
「がんばれ!ニッポン!」を使用していましたから、
その影響は計り知れません。

もし、ドクター中松氏が、
個人的な配布物に過ぎないとされた会報以外にも、
市場を流通する出版物に「がんばれ日本」を使用していたとしたら、
ちゃんと登録商標を使用していたと認められ、
JOCは、印刷物(ポスターも含まれると思います)について
「がんばれ!ニッポン!」の商標を使用できなくなった
『かも』知れません。

 この事件は、実に微妙なケースであったと思います。


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2007年11月6日(火)

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