知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第36回
ドメイン名の不正取得は違法です

前回ご紹介したドメイン名の高額取引事例は、
主として米国を中心としたお話でしたが、
わが国では、他人の商号や商標と同一又は類似のドメイン名を、
不正目的で取得したり、保有したり、使用する行為は、
不正競争行為として禁止されています。
平成13年に改正されました(不正競争防止法第2条1項12号)。

この法改正が行われるにあたって、
ドメイン名取得の在り方について問題となった
有名な事件があります。
『JACCS事件』といいますが、
これは、カード会社の株式会社ジャックスが、
”jaccs.co.jp”を取得及び使用していた北陸の業者に対し、
その使用の差し止めを求めた訴訟事件でした。
当時は、まだ12号が追加される前でしたので、
別の条項が採用されて使用の差し止めが認められました。
この事件では、原告である株式会社ジャックスが
訴訟提起を決意する背景として、
被告側が(おそらく高額買い取りを目的として)
執拗に書面で面談を求めてきたということがあったようです。

ドメイン名は、
もともとインターネット上でサイトやサーバを特定するための
文字や数字の配列に過ぎず、
申請に際しても原則として誰もが先着順に登録できる制度です。
それが、近年のインターネットの急速な普及により、
インターネットを通じた通販や広告業が発達しましたので、
ドメイン名が極めて高い社会的価値を有するに至りました。
その結果、事業者が長年にわたって築いてきたブランドに
タダ乗りしようとする者があちこちで現れるようになったのです。

ここで、問題となるのは、
インターネットの基本思想にも共通する
ドメイン登録制度の精神(誰もが先着順で登録できる)と、
ブランドにタダ乗りしようとする動きの抑制との調整です。
ドメイン登録を商標登録のように登録審査制にすることは、
これまでのインターネットの自由な精神との間に
矛盾を生じさせかねませんし、
上記ジャックス事件のように商標ゴロのような動きが活発化して、
既存の事業者の
適正な営業活動が妨げられるようなことがあってもいけません。

そこで、わが国では検討の末、
不正競争防止法で規制することにしました。
特許法、実用新案法、意匠法、商標法とは異なり、
不正競争防止法には
「国家から保証された権利」という考え方はなく、
「不正競争という行為事実そのものを取り締まる」ことが
基本思想となっています。
ですから、ドメイン名取得にまつわるトラブルのような
問題解決を図るにはうってつけなのです。


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2007年11月10日(土)

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