知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第42回
治療方法はホントに特許にならない?

日本では人道的な見地から、
原則として人間の治療方法に関する特許は認められませんが、
米国では立派な特許として認められています。
もっとも米国にしても1952年以降に
全ての医療行為に対する特許が認められるようになったという
変遷があります。
さらに、現在の米国でも、
特許となっている医療行為を医師等が
商業目的でなく実施する場合には
侵害とならないという規定があります。

ちなみに、欧州では、欧州特許条約という条約上の決まりがあって、
人間のみならず動物についての手術、治療、診断方法も
特許の対象とされていません。
より広い社会倫理や公衆の健康に配慮されていると言えます。
BSEのような病気に冒された牛の治療方法が
特許で独占されて自由に使えないとなると、
結局人間社会に打撃が及ぶことまで想定されているわけです。
実は、2000年に欧州特許条約の改正に際して、
医療方法特許の導入について検討されたのですが、
結局公衆の健康への配慮が重視されて合意には至りませんでした。

このように、医療に関する発明の取り扱いについては、
それぞれの国や地域の倫理観や社会通念があいまって
微妙に取り扱いが異なります。
ここで、共通する考え方は、
「人命に関わる医療行為を特定の者に独占させてはならない」
ということです。

しかしながら、医薬品は日本でも特許になりますし、
医療機器や測定器のようなものも、
もちろん装置として特許になります。
そうすると、「これは医療行為なのか、そうでないのか」が
極めてシビアになる境界線が存在することになります。
例えば、「医療機器の作動方法」なんていうと、
どういった扱いになるのでしょうか?

これを日本の最新の審査基準からご説明しますと、
「医療機器の作動方法」は
医療機器自体に備わる機能を方法として表現したものであるから
特許の対象になる、という判断になります。
一方で、この「医療機器の作動方法」には、
医師の行為や人体に対する作用を含む方法は含まれない、
と判断されます。


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2007年11月24日(土)

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