| 第45回『ローマの休日』大論争
 映画の著作権期間について、もう一つ重要なお話があります。それは、著作権法特有の期間の数え方です。
 例えば「公表後50年」というのは、
 公表された年は含めず、
 その翌年の1月1日から数えて50年とします。
 つまり、1953年に公表された映画の著作権は、
 原則として全て翌年1954年の1月1日から数えて50年である
 2003年12月31日午後24時に満了するということになります。
 ではその境界はどなっているのか、
 12月31日午後24時まで続いた映画の著作権は、
 翌1月1日午前0時に存在していたことになるのかどうか、
 実に「微妙」です。
 そして、2004年1月1日午前0時になれば、改正著作権法の適用があります。
 つまり、2004年1月1日午前0時の時点で
 著作権の期間が一瞬でも残っている映画については、
 著作権の期間がさらに20年延長されて「公表後70年」という、
 大きな恩恵を受けることができるのです。
 1953年制作の「シェーン」や「ローマの休日」の映画会社は、この満了の瞬間(2003年12月31日午後24時)は、
 改正著作権法の施行日(2004年1月1日午前0時)と
 実質的に同時刻である、
 したがって法改正の瞬間には著作権がまだ残っており、
 改正著作権法の
 「公表後70年」の期間が適用されるべきだと主張したのです。
 「シェーン」や「ローマの休日」のような名作の著作権が、旧法の適用によって
 2003年12月31日で消滅してしまったとされるのか、
 それとも新法の適用を受けて
 2023年12月31日まで延長されたものと扱われるのかでは、
 権益等の観点から大きな差が出るものと思われます。
 気になる「ローマの休日」事件の地裁判決は、「12月31日午後24時で著作権は消滅し、
 翌1月1日午前0時には持ち越さない」
 という判断でした。
 このあと即日控訴され、さらに最高裁までもつれましたが、
 まだ最終的な結論は出ていないようです。
 「シェーン」事件の方は、
 「持ち越さない」ということで映画会社側が敗訴しました。
 興味深いのは、著作権を管轄する文化庁の見解が、「12月31日午後24時で消滅する著作権は
 翌1月1日午前0時にも存在していることになる(持ち越す)」
 としていたことです。
 「ローマの休日」事件の地裁判決は、
 これを真っ向から否定する判断だったのです。
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