知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第50回
中古本の売買は侵害になる?

本を購入するときは中古書店で買って、
読み終わったらまた中古書店に売却してしまうようなことを
繰り返していたら、
出版社や作家はちっとも儲からなくなるじゃないかということで、
問題提起をさせていただきました。
中には
「正規ルートで新刊本を購入しないのは著作権の侵害ではないのか」
とおっしゃる方もおられるようです。
この点について考えてみたいと思います。

結論から申しますと、
中古書店を介した中古本の売買を
何らかの著作権侵害と言い切ってしまうには、
少し無理があります。

まず、新刊本を購入した人のことを考えてみましょう。
その人は、新刊本(物品)を購入すると同時に、
これを処分する権利も併せ持つと考えるのが自然です。
この「処分」というのは、
単に捨てることのみならず売却することも含みます。
つまり、新刊本が正規に購入された場合には、
その本を捨てようが売却しようが買った人の自由であり、
「買う」ということは、
その本にまつわる権利についての対価を
全て支払ったことになるという考え方ができるのです。
これを「消尽(しょうじん)」といいます。
ですから、
正規に販売されたあとの本が中古市場に出回ること自体は、
著作権などの権利の侵害との直接的な関連性は薄そうです。

でも、中古書店で中古本を購入した人が、
またこれを中古書店に売却する行為については
釈然としない部分が残るかもしれません。

この点については、
出版社や著者が同じ本で
二重に利得を得て良いのかという見方が出てきます。
例えば、本が一冊売れれば一冊分の印税が著者に入りますが、
同一物品が他人に転売されたときに、
その他人からまた印税を徴収するのは
一冊で印税分を二重取りしているので
取り過ぎであるという考え方です。
ここで、
「その他人は別途新しいものを買うべきだ!」
との意見が出るかもしれませんが、
「新刊だったら値段と見合わないので買わないよ」
ということもありうるわけです。
中古市場だからこそ流通したという見方です。

もっとも、世の中はどんどん変わってきています。
中古書店の場合は、新刊の発行から1週間もしないうちに、
それらの新古本が平積みされるようなケースが
多発することも考えられます。
そうすると、ほとんど待たなくても安く買えるということで、
本来新刊を買う人々が買ってくれなくなる現象が
目に余るようになるかもしれません。
その場合に法律的な調整が入る余地はあると思います。
現在は、消尽論優勢のようです。


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2007年12月13日(木)

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