| 第53回真の発明者は誰ですか?
 特許出願経験をお持ちの方の大半は、きっと企業にお勤めの方と思います。
 この場合、
 開発の現場や研究所などにおいて発案されたアイデアについて、
 自らは発明者として願書に名を連ねるものの、
 出願そのものは会社名でなされます。
 また、発明者の数についても、
 もちろん単独で発明される場合もあるでしょうが、
 グループで共同研究した結果生まれる発明も多いので、
 そうした場合には願書の発明者欄は連名になります。
 すわなち、共同発明です。
 この共同発明について申し上げておきたいことがあります。以前、企業に勤務していた頃、
 ある部門からの出願依頼の発明者欄に、
 いつも同じ方の名前が最後に記載されていたことがありました。
 件数も多かったので、ちょっと筆頭発明者に聞いてみたところ、
 「私共の部門長です」とのこと。
 これはちょっとマズイかもなぁ、と思って
 もう少し詳しく聞いてみることにしました。
 すると、その部門長は、開発の大方針を指示しており、開発者達の開発報告も最終的には彼の元に届けられていたそうです。
 もちろん、開発計画全体の進捗を管理監督する立場にあり、
 常にではありませんが、
 開発者達に対して気の付いた点のアドバイスがあるとか。
 どうも、私がインタビューした結果得た心証としては、
 その部門長が現場で生まれた発明に直接タッチしていなくても、
 半ば名誉的な意味合いで、その方のお名前を入れるようなのです。
 このようなケースでは、願書に記載された発明者に、「真の発明者」とは呼べないヒトが入り込んでいると
 見なされる可能性があります。
 「真の発明者」とは、
 なされた発明の技術的思想の創作行為に
 現実に加担したことが必要とされます。
 例えば、具体的な着想を示すことなく
 単に研究/開発テーマを与えたに過ぎない者や、
 研究開発の資金や設備を提供したに過ぎない者は、
 真の発明者ではありません。
 逆に、発明者の指示に従って単にデータを整理するとか、
 実験を行ったに過ぎない補助者も、真の発明者とは言えません。
 もし、このように真の発明者とは呼べない者を発明者として記載したまま特許になった場合には
 どうなるかというと、
 厳密な意味では、第三者から無効を主張されかねません
 (このような主張がなされて
 実際に特許無効になったケースを私は知りませんが・・・)。
 近年では、このようなご祝儀的な名前入れをしないよう指導する企業知財部門も増えてきているようですが、
 賢明な措置だと思います。
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