知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第63回
世界初の特許制度はヴェネチアで誕生しました

現在は、米国・欧州、
そして日本がリードしている知的財産の世界ですが、
特許制度発祥の地は14世紀のヴェネチアです。

この間、イタリア弁理士会の代表団と会ってきたという
事務所の先輩弁理士が、
1枚のシートを頂いて帰ってきました。

そのシートには、短い法文がイタリア語と英語で併記されており、
タイトルは、
"il decreto sulla pretezione delle invenzioni
nella Repubblica di Venezia"
となっています。
直訳すると
「ヴェネチア共和国における発明保護に関する条例」
といったところでしょうか。
日本では、「ヴェネチア特許法」としても知られており、
世界で最初の成文特許法と言われています。
1474年3月19日の制定だそうです。

法文自体は非常に短く、250ワード程度です。
しかし、この短い法文の中に、

(1)新規で独創的な発明が保護対象となること、
(2)保護期間は10年であること、
(3)保護された特許は政府機関に登録され、
   何人も発明者の同意又は許可なしに
   これを真似してはならないこと、
(4)保護された発明を無断で真似した者は
   賠償金を支払う責めを負い、かつ偽造品は破壊されること、

など現在の特許制度の基本的な要素がすでに詰まっています。
さらに驚くべきことは、
優れた発明をした者に特許を与えるならば、
創造の精神がもっと喚起されるという点が
明確に指摘されていることです。
まさに、発明を保護して産業の発達を促進する
特許制度の根幹的精神に他なりません。

14世紀のヴェネチアと言えば、
ヴェネチアングラスに代表されるようなガラス加工技術や、
銀製品、衣料品などの工芸品が芸術の域まで高められ、
国としての隆盛を究めていました。
優れた職人も大勢いたことでしょう。
また、海洋都市でもありましたので、貿易も非常に盛んでした。
ヴェネチアに関する歴史本はいつ読み返してみても魅力的です。

ヴェネチア特許法は、ルネッサンス幕開けの時代に
優れた技術と貿易によって栄えていった共和国が、
技術や職人の流出を防ぎ、近隣諸国との競争に打ち勝つために
元老院によって考案された画期的な制度だったのです。


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2008年1月12日(土)

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