| 第67回特許持ち寄る企業のせめぎ合い
 数多くの特許が関わってくる技術規格を世の中に効率的に広めていくために、
 パテントプールという制度が利用されることを前回お話しました。
 技術規格といえば、2つ以上の陣営がその優劣を競って争うことがたびたびあります。
 古くはビデオテープの規格の争い(VHS−β)がありましたし、
 最近では青紫系半導体レーザーを使用する
 次世代DVD規格の争い(ブルーレイ−HD DVD)があります。
 陣営同士の争いはもちろん大変で熾烈を極めますが、実は、陣営内の駆け引きも存在します。
 今回はたまたま同じ陣営に属しているけど
 前回は敵同士だったし、将来また敵に回るかもしれないね、
 という企業間の微妙な関係が存在するのです。
 ですから、同じ陣営に属する企業が規格に採用されるような特許技術を持ち寄る際にも、
 どの技術を出してどの技術を手許においておくかという
 駆け引きのようなことが起こります。
 この駆け引きが度を越しますと、
 独占禁止法にも触れかねませんので、匙加減が難しいところです。
 一番わかり易い作戦は、「この特許技術を採用しなければ規格準拠とは扱われない」
 というような特許技術をパテントプールに提供し、
 応用特許は手許に置いていくというやり方です。
 例えば、ビデオテープの技術規格では
 当時VHSかβかで争われましたが、
 ビデオテープをデッキに挿入すると
 自動的にデッキ内部に格納されていくメカニックな部分は、
 映像の技術規格とは直接関係ない部分です。
 もしコストがかからない効率的なやり方を
 特許で押さえることができれば、
 むしろテープの中身がVHSであろうとβであろうと
 関係なく利用することができます。
 そういった周辺技術を開発し、
 あえて規格に採用されるような働きかけはせずに、
 じっと手許に貯めていくのです。
 他社のほうは、コストや効率を追及すると
 どうしてもその特許技術を使わなければならなくなりますから、
 止む無くパテントプールの特許料分とは別に、
 その応用特許を持っている企業に
 個別にフィーを支払うことになります。
 こうした駆け引きは、国内企業間だけでなく海外企業との競争でも起こります。
 それも規格戦争が勃発する何年も前から粛々と仕込まれていきます。
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