知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第66回
パテントプールってなんですか?

以前、携帯電話が
数百件〜千を越える特許のかたまりであることを
お話したことがあります。(第5回ご参照)

携帯電話以外にも、皆様の身近なところでは、
例えばDVDにも多くの特許が関わっています。
このうち代表的な特許技術といえば、
画質を落とすことなく
できるだけ多くの画像データを記録するためのデータ圧縮技術や、
DVDメディアにどのような手順でデータを記録するかについての
書き込み技術などがあります。
これらは、標準化された技術規格として採用されていますので、
ある会社が新製品を開発して、
この「○○規格準拠」を謳うためには、
特許になっている規格技術を必然的に使用することになります。

数百の特許が関わってくる
DVDのような規格技術を効率よく普及させるためには、
関連特許の一元管理ができる仕組みが整っていると便利です。
この管理の仕組みが「パテントプール」と呼ばれるものです。

もし、パテントプールがなくて規格特許を個別に管理するとすると、
規格に関わる特許権者を全て洗い出し、
ライセンス条件を一つずつ取り決めたりする必要があって
大変な労力と費用がかかります。

パテントプールを形成して運用すれば、窓口は一つで済みますし、
ライセンスを受けたい企業が参画しやすい環境も整います。
また、プールに特許を持ち寄った企業間の立場も明確になるので、
得られたライセンス収入の配分も
合理的に決めやすくなるというメリットがあります。

一方で、パテントプールを運営していく上では、
独占禁止法に抵触しないような注意も必要です。
例えば、標準化の策定後早々にパテントプールを形成し、
後発の競業他社を故意に排除しようとするとか、
パテントプールに登録されている特許の使用許諾を受けた企業が
その特許発明に関連する応答技術を開発したら
無償譲渡を強制するといった行為(無償グラントバックの強制)は
独占禁止法に触れるおそれがあります。

IT社会となって技術革新が目覚しい世の中になっていますので、
新しい技術を世の中に普及させていくためには、
パテントプールを利用したライセンスの枠組みは必須といえますが、
運用するうえでは
都度発生する問題に取り組んでいく必要もあります。


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2008年1月19日(土)

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