知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第73
サブマリン特許って?

古典的なパテントトロールを見ていく前に、
是非お話しておきたいことがあります。
「サブマリン特許」についてです。
初期のパテントトロールを暗躍させる一因にもなりましたので、
なんとなく知っておられる方もこの機会に再確認致しましょう。

サブマリン特許は、特許が成立した途端にその内容が公になって、
世間をあっと驚かせてしまうものです。
驚かせるわけですから、成立した特許にかかる発明は、
既に世の中で広く使われているわけです。
「えっ、何でこんなシンプルな発明が
今頃になって特許になるんだ!」
と多くの大企業が驚愕するのです。
こういったことが起こってしまう背景には、
米国特許制度の2つの特異性があります。

まず、米国特許制度には1990年代半ばまで、
特許公開制度がありませんでした。
日本であれば、特許出願は出願してから1年6ヶ月後に
強制的に公開されます。
日本だけでなく世界の多くの国々が採用している制度です。
一般には審査前に広く公開して
第三者による重複出願を避けることが目的と言われています。

ところが、米国では、
正確には2000年11月28日以前に出願された特許出願は
登録されるまで公開されないというルールなのです。
世界基準にもなっている
特許出願公開制度をようやく採用してからも、
その対象は、2000年11月29日以降の出願に限ることとしたのです。

次に、これも米国に特有の「継続出願制度」です。
少なくとも日本では、出願後に審査があって
いろいろ補正したけれども
やっぱり特許にはできませんねということになると、
拒絶査定という行政処分が下ります。
もちろん、この処分に対する不服申し立てはできますが、
審判という手続に移行しますので、
特許出願の審査という段階は終了します。

しかし、米国では、審査段階の最終拒絶通知後に
一定の料金(高額ですが)を支払えば、
拒絶を確定させることなく審査の最初に戻すことができたのです。
ですから、お金と根気さえ続けば、
何回でも審査のやり直しを請求して粘り通すことができました。

このような2つの特異性を背景に、
米国でサブマリン特許が猛威を振るった時期があります。
その中で、特許の重大性と潜伏期間の長さで
世間をあっといわせたサブマリン特許が「レメルソン特許」です。
潜伏期間は、なんと38年でした!


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2008年2月5日(火)

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