| 第76回ワンチップ特許で100億円
 最後にもう一人ご紹介致します。ワンチップ特許で有名なギルバート・P・ハイアット氏です。
 この人の特許もサブマリンで有名です。
 1969年に出願されて1990年に特許が成立しました。
 例によって、21年間の潜伏です。
 発明の内容はこれまた単純なものです。ワンチップというその名の通り、
 1つのチップに様々な機能をもったモジュールを搭載するという
 シングルチップの技術思想です。
 現在のマイクロプロセッサ(MPU)は
 例外なくこのスタイルを実施しなければ成り立ちませんので、
 特許成立当初、国内外の半導体メーカーや自動車メーカーは
 一斉に驚愕しました。
 でもマイクロプロセッサといえば、世界初のマイクロプロセッサ・Intel4004を同時期に設計した
 我が国が世界に誇る開発者
 Dr. Masatoshi Shima(嶋正利氏)がおられますし、
 ハイアットの発明が
 本当に特許に値する傑出したアイデアだったのかと
 疑問を呈する声も多かったようです。
 しかしながら、現にハイアット氏はこの特許で莫大な収入を得ました。
 一説によれば、1992年頃までに
 約7000万ドルの実施料収入があったと言われています。
 当時の相場を1ドル125円として、87億5000万円です。
 日本企業が徴収された特許料総額も
 100億円とも200億円とも言われています。
 話は膨らむばかりですが、
 ハイアット氏の個人年収も100億円を超えたことがあったようです。
 さんざん持ち上げておいてとても切り出しにくいのですが、実は、1996年にハイアットの特許は事実上無効とされてしまいます。
 同じ発明をした
 (きっと同種の着想をした人は他にも多かったと思いますが)
 テキサスインスツルメンツ社の社員の方が、
 ハイアットの発明時期よりも早かったことが証明されたからです。
 これも米国が、先に出願した者を優先する「先願主義」ではなく、
 たとえ出願は遅くとも
 先に発明したことが証明されればそちらを優遇する
 「先発明主義」を採用していたがために起こった
 数奇な運命なのでした。
 自らの特許を無効とされた当のハイアット氏は、その後どうなったのでしょうね。
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