知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第77回
図書館に複写機が設置されていますが・・

図書館内に
複写機が普通に設置されているのを見かけることがあります。
規則が厳しいところでは、
申請用紙に記入して窓口で依頼してはじめて
複写サービスを受けられるようです。
でも、
「図書館のような公共施設に堂々と複写機などを置いて
著作権問題にひっかかったりしないのだろうか」
と思われた方おられませんか?

図書館にある複写機の利用目的には、
古い文献を一部複写して
学術研究に役立てることなども含まれているはずですので、
一概に「設置に問題あり」とすることはできませんが、
グレーな部分が存在することも確かです。

私個人の体験でいいますと、
もう何年も前に神戸近郊の某図書館で
新しい雑誌と昔の定期刊行物の掲載記事を複写しようとして
窓口で依頼したら、
昔の刊行物は掲載記事をまるまる複写できましたが、
新しい方は
掲載分の半分弱のページ数しか複写してもらえませんでした。
最近では、
長年探していた趣味の古書を国立国会図書館で見つけたので
窓口で複写依頼しましたが、
こちらも半分以下の枚数しか複写できませんでした。
ここで気になるのは
「半分以下ってどんな意味があるの?」です。

原則、著作権が発生している著作物を
無断で複製することは違法ですが、
著作権法では
私的使用のための複製行為に一定の例外を設けています。
代表的なものに
第30条の「私的使用のための複製」と
第31条の「図書館等における複製」があります。
30条の「私的使用のための複製」の方は
最近ダウンロード行為などに関連して
見直しのための議論が活発ですが、
31条では営利目的でないことと
調査研究目的であることなどを条件に
「一部分(古い定期刊行物に掲載された個個の著作物については
その全部)」
の複写が認められています。

実は「半分以下」というのは、
この「一部分」という条文の解釈について示された
裁判所の見解が元になっています。
「多摩市立図書館複写拒否事件」という有名な事件なのですが、
平成7年に地裁判決がでました。
それより多いと客観的に一部でなくなるという
いたって真面目な判断ですね。


←前回記事へ

2008年2月14日(木)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ