知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第78回
国会図書館の蔵書を電子化!

今年1月はじめに3000万冊を超える国会図書館の蔵書を電子化して
全国どこからでも閲覧可能にするための法改正を行う準備に
政府が着手したとのニュースが流れました。
5月頃にまとめられる
「知的財産推進計画2008」にこの方針を盛り込み、
2009年の通常国会での法案成立を目指すそうです。

このニュースから得た私自身の率直な感想は、
「そんなに簡単に事が運ぶだろうか」です。
意地悪に受け取ったわけではないのですが、
図書館の蔵書を電子ライブラリ化して
全文検索もできるようにするビックプロジェクトは
米国のグーグルが2004年頃から取り組んでおり、
その後の紆余曲折をいろいろ見てきたからです。

グーグルは、2004年12月に
ハーバード、スタンフォード、ミシガンといった
大学図書館の協力を得て
蔵書書籍を電子化する「Google Print for Libraries」という
プロジェクトを発足させました。
(現在は、「Google Books Library Project」と
呼ばれているようです)
電子化された書籍はインターネットを通じて
どこからでも検索・閲覧が可能になります。

プロジェクト発足当初は、
広範囲にわたる著作権侵害を憂慮した
米国出版業界からの猛反発があったようですが、
やりようによっては
うまい広告収入が期待できる仕組みにできるということも判明して
徐々に賛同者を得て活動を広げていきます。
現在でも活動は続いていますが
途中このプロジェクトを疑問視する団体などからの
提訴もありましたし、
決して順風ではありません。

もっとも、著作権切れの作品
(夏目漱石や芥川龍之介など多くの名作があります)には
法的な問題はないと言えるでしょう。
これはすぐ実現できます。
しかし仮に蔵書の9割が古典だとしても、
世間のニーズは残りの1割の新しい著作物に集中してしまうのが
物の道理ではないでしょうか。
これは図書館のインターネット蔵書検索を
日常利用している私の体感です。
新しいものほどいつも膨大な数の予約が入っています。

図書館好きですので今後の展開を見守りたいですが、
これまで米国でされたのと同様の議論が
少なからず再燃することと思います。


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2008年2月16日(土)

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