知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第80回
著作権をめぐる日朝関係のいま

去年の暮れに長野に行く用事があって
松本市内のホテルに宿泊したときのことです。
なに気にテレビニュースを見ていますと、
「北朝鮮vs日本 判決迫る著作権訴訟」というタイトルが出てきて
思わず見入ってしまいました。

ニュースは、日朝間で争われた
著作権侵害をめぐる訴訟の判決が週末に出る予定であることを伝え、
事件の簡単な経緯などを特集していました。
てっきり北朝鮮側が日本のコンテンツを無断で複製して
問題になっているのかなと思ってしまったのですが、
実は全くの逆でした。

事件は、北朝鮮側で製作されたニュース映画などを
日本の民放2社が無断で放映したとして
著作権侵害を理由に北朝鮮側が損害賠償を求めたものだったのです。
例えば、報道番組などで
金正日総書記が視察しているフィルムが
放映されることがありますが、
元は北朝鮮で制作されたものです。
さらに驚かされたのがこの民放2社の言い分です。
「北朝鮮とは国交がないから
日本国内では北朝鮮の著作物を保護する義務はない
(ので使用料は支払わない)」
というものです。

色々取り沙汰されている北朝鮮ですが、
国際的な著作権保護を定めたベルヌ条約のれっきとした加盟国です。
実際にフランスなどの製作会社は
こうした映像に対する使用料をきちんと支払っているようです。
もちろん日本でも
きちんと使用料を支払う対応をとっている民放もあります。

う〜んと唸ってニュースに注目していると、
追い討ちをかけるように学識経験者が
次々と民放2社を支持する見解を述べています。
しかし、ようやく待っていたコメントが出てきました。
「日本国内で
北朝鮮の著作物を保護する義務はないという立場をとると、
北朝鮮国内における我が国の著作物の無断複製に
大義名分を与えてしまうことになる」と。

そう、これです!
端的にいってしまえば
コンテンツの総資産価値は日本の方がずっと高いわけですから、
北朝鮮の著作物を尊重しない場合に損はあっても得はないのです。

数日後の東京地裁判決は、
被告の言い分通りに北朝鮮側の訴えを棄却しました。
改めて考えさせられる事件でした。


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2008年2月21日(木)

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