知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第93回
職人技が光る!

前々回、ミサイルの頭の部分の丸み加工に
「絞り」という特殊な加工技術が必要とされるのではないか
というお話をしました。
3Dマシニング加工全盛の現代において、
なぜ機械加工では絞りがうまくいかない場合があるかというと、
一見した形状はきれいに加工できたとしても
部品全体の厚みを均一に保つことが
非常に難しいからなのだそうです。
平板で厚みを均一にするのはなんでもないことですが、
曲げたり絞ったりするとその部分の厚みは必ず歪みます。
そうした加工部分も含めて部品全体で厚みを一定に保つには
職人さんの技が必要とされるというわけです。

きっと、ミサイルやロケットが放り出される
宇宙という厳しい環境では
ちょっとした歪みが事故の元になるのではないかというのが
私の憶測です。
逆に言えば、熟練工の腕にかかれば
宇宙環境基準をクリアする品質を
生み出すことが可能ということです。

日本の職人技を神聖視しているわけではないのですが、
国内トップクラスの職人さんの感覚が
機械を凌駕することがあるのは本当です。
例えば、さきほど
平板の厚みを均一にするのは造作もないと言いましたが、
高い精度を要求される測定器をチェックする原器の調整は
なんと人の手によるものだそうです。
人間の感覚を頼りに、原器上に
凹凸差が0.1ミクロン以内の平面を出せる職人さんがおられる
というお話を小関智弘さんの「職人学」という本で
読んだことがあります。

自動車産業でもそうだと思うのですが、
日本の工業的成功は
町工場の職人さんのノウハウの蓄積に負っている部分が大きいです。
機械をつくる機械である「工作機械の製作」においても
机上の計算ではうまくいかない部分がたくさんあると思います。

私も日本人として
日本のメーカーや知的財産の仕事に関わってきておりますので、
これまでにもある程度「職人技」に関心を払ってきました。
今後も研究を進めるつもりですし、
別の機会にまた角度を変えて是非お話させて下さい。


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2008年3月22日(土)

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