知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第96回
日本でも秘密特許が導入されます

日経新聞には昨年11月下旬の朝刊一面トップに掲載されましたので、
ご記憶の方も多いかと思います。
日本でも平成21年に秘密特許制度の導入が予定されています。

改正の趣旨は、
国の安全や産業競争力が損なわれる事態を未然に防ぐことです。
概ね欧米の秘密特許制度を踏襲したものと言えます。
軍事又は軍事転用可能な発明は秘密特許に認定されて
その存在が秘匿され、
代わりに国家が補償金を支払うというものです。

近年はインターネットによる情報公開が各国特許庁で進んでいます。
日本の特許庁でも
特許電子図書館(IPDL)で出願人や公開日、
請求項や要約に含まれるキーワード等による
検索が可能になっています。

このように世界中から「取り放題」の環境が整うと、
便利である反面リスクが発生するのも確かです。
例えば、少なくとも特許電子図書館から
毎日膨大な数の公開公報が
中国にダウンロードされている事実があります。
特許になる前の「公開公報」ではなく、
特許になった後に掲載される「特許公報」を参考にすることは、
それまでに容易になし得なかった技術内容が
他人にも実施可能に記載されていることもあって非常に有意義です。
改良発明に取りかかる場合にも、
そこまでの苦労はしなくても済むメリットがあります。

ですから、
「国の安全や産業競争力が損なわれる」おそれのある
軍事技術又は軍事転用可能な技術が
いとも簡単にダウンロードされてしまうと
直接国益を脅かすことになりかねませんし、
間接的にも産業競争力が徐々に損なわれることになって、
日本がますます元気が失われる心配もあります。

そうした危機感もあって
今回の制度導入に踏み切ったものと思われますが、
見逃してはならないのは、この制度の導入によって、
「新規発明の公開の代償として特許権を与える」
という特許制度の根幹が揺らいでしまうということです。

日本もいよいよ切羽つまってきたとするならば、
特許という瑣末な分野にまで
その影響が出てきていると見ることもできますね。


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2008年3月29日(土)

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