知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第108回
産業財産権条約の故郷はパリです

1883年に締結された「工業所有権に関するパリ条約」が、
産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権、不正競争防止)
条約の大元です。
1800年代後半は産業革命真っ只中で
パリにおいても万博が頻繁に開催されていましたので、
いよいよ産業進出を図る
先進各国の利益調整が必要になってきたことが
背景にあったと見てよいでしょう。
日本も遅ればせながら先進国の仲間入りを果たすべく
富国強兵に勤しんでいましたが、
このパリ条約に加盟する際、
条約の要請を遵守するために
わざわざ不正競争防止法を整備したという経緯があります。

現在の日本の特許法においても
パリ条約に遵守して取り決められているものがいくつもあります。
例えば、優先権制度、不実施や不使用に対する措置、
特許の回復や特許権の侵害とならない場合の取り決めなどです。

そして、パリ条約には
その根底をながれる3つの基本原則があります。
内国民待遇の原則と、優先権制度と、
各国工業所有権独立の原則です。

内国民待遇とは、
同盟国の国民を自国民と同等か
それ以上に保護しなさいという要請です。
優先権制度は、自国における出願について、
優先期間内であればその出願日(先行性)を維持したまま
他国へ出願できるという制度です。
特許の場合の優先期間は12ヶ月です。
また、各国工業所有権独立の原則は、
各国ごとに発生した権利はその国ごとに独立して存在して保護され、
特許権の効力についても
互いの国に影響を与えないものと解されています。

ですが、3番目の原則については
時代の変化に伴って微妙な変化の兆しが
現代社会において見られるのではないかと思います。
例えば、皆さんにも馴染みのあるところで、
サーバーからコンテンツをダウンロードするような場合に、
サーバーは海外にあって
ユーザーが自国において各々ダウンロードするならば
特許権の侵害はどのように処理すればよいのか
といった問題があります。
侵害の態様が各国にまたがっている場合には
独立の原則なんて言っておれなくなるのです。


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2008年4月26日(土)

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