知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第114回
デザインコンセプトをどう伝える?

発明の場合は、これが完成へと向かう課程で
技術思想の下支えが重要になります。
しっかりした技術思想がないと、
発明を実施しようとしたときに肝心な部分が空白であると判明して、
なんだ発明として体をなしていないじゃないか
ということになります。

新しいデザイン(特に、プロダクトデザイン)を試みる上でも
デザインコンセプトが非常に重要であることは、
歴史的にみても
ウィリアム・モリスのアーツ・アンド・クラフト運動を源流とし、
アール・ヌーボーやドイツ工作連盟、
それにバウハウスやデ・スティルの思想の変遷が、
それぞれ重要なカテゴリを形成していったことからも分かります。

皆さんに馴染みがあって、
私の知っている身近なデザインコンセプトの例は、
AUのデザインプロジェクト第一弾として売り出された
「インフォ・バー(info.bar)」の逸話です。
深沢直人さんの手によるものですが、
最初プロジェクトのスタッフに
ご自分のコンセプトを説明されるときに、
携帯電話を真似て組み立てられたレゴ(LEGO)ブロックを見せて
「こんなのがつくりたい」と言われたそうです。

言葉であれこれ説明すると
イメージのブレが非常に大きくなりますし、
実際に図面を引いてしまうと
スタッフの発想を不用意に縛りかねない。
そうした難しさを乗り越えるために用いられた
深沢氏一流のコミュニケーションツールだったのでしょう。
あと記憶が定かではありませんが、
石鹸(本体?)に爪楊枝(アンテナ?)を刺して
「こんな感じ〜」ともやられたとか。

優れたデザインコンセプトは、
イメージとしてその人の中で醸成させていくことも大変ですが、
出来上がってきたものを人に伝えるのも難しいと言えます。
発明で言えば、「売り込み」に相当する部分です。

最後にアニメの世界に飛んでしまって恐縮ですが、
例えば宮崎駿さんほどの巨匠ともなると、
数枚のイメージボードがフタッフに与える影響は
計り知れないものがあるかもしれません。
しかし、宮崎監督の頭脳の中でさえ、
生みの苦しみは
凡人の想像をはるかに越えたところにあると思います。


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2008年5月10日(土)

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