| 第120回世界の特許法(シンガポール編)
 シンガポールも香港と同様に英国の影響が強く残っている国です。
 何年か前に企業の知財スタッフとして
 シンガポールの研究拠点に出張したことがあり、
 現地の技術者たちと交流を持ちましたが、
 例えば、米国よりも
 ロンドンの大学への留学に対するステータスが
 強く残っているように感じられました。
 皆さん、中国名とともに英語のニックネームもお持ちで、
 "Hi, Jimmy!!"とか、
 "Do you agree with this opinion, Alfred?"
 などとやっていました。
 でも、あのシングリッシュ(SINGLISH)は独特ですよね。
 そんな英国の影響もあって、シンガポールで独自の特許法が制定されたのは
 10年ちょっと前のお話です。
 それまでは、英国で成立した特許を
 一定期間内にシンガポールで登録できる
 確認的な登録制度があるだけでした。
 現在の特許法は、2004年の改正法が適用されたものとなっています。その仕組みの中で最も特徴的なものは、
 「FAST TRACK」システムと「SLOW TRACK」システムの
 2種類の審査システムの採用です。
 ちなみに、シンガポールでも香港と同様に
 自国では特許の審査を行いません。
 オーストラリア特許庁、オーストリア特許庁、
 デンマーク特許庁で行われます。
 外部委託ですね。
 「FAST TRACK」システムは、審査手続を短期に済ませ
 迅速な特許の保護を求めるための審査システムで、
 対応する外国出願
 (現時点では、米国、出願、オーストラリア、カナダ、
 ニュージーランド、日本の出願に限られます)
 についてのサーチレポートや
 国際特許出願の調査報告を提出することによって審査負担を減らし、
 スピードアップを図るものです。
 レポートの内容が良好であれば
 シンガポールで登録される可能性も高くなると思われます。
 一方、「SLOW TRACK」システムは、特許成立を急ぐ必要がない場合に利用される手続で
 審査期間は長くなります。
 しかし、審査費用は「SLOW TRACK」システムの方が割高だそうです。
 遅くて高いとは全然割に合わないということで、
 出願人が利用するのはもっぱら「FAST TRACK」システムのようです。
 シンガポールも、パリ条約、PCT、WTOなど多くの国際条約に加盟しています。
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