元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第19回
なぜか食道ガンは酒好きの作家やジャーナリストに多い

たとえ、己がガンであることを納得した人たちでも、
親類縁者や会社の友人には内緒にしているケースが多いようです。
ガンと聞けば、世間の常識では
「ああ、あいつも御陀仏か」と
イヤな噂が立ちますから、
処世や出世までが邪魔されかねません。
ガンを宣告されて分かることですが、別にガン即=死ではなく、
いろいろ治療法や養生法を考えれば、
生き延びる手だてはつく病気なのですが、
世間の常識では「ガン即=御陀仏」という迷信がはびこっているので、
大きな声で「俺はガン」などとはいえないのです。

しかし、世間に堂々と己のガンを公表している剛毅な人たちもいます。
やはり食道ガンに襲われた赤塚不二夫さんもその一人です。
赤塚さんといえば、40年前、僕が最初に出版社に勤めて、
担当になった漫画家でしたから、
病気まで同じになるとは、因果な縁ということになります。

当時「おそ松くん」という人気絶頂の漫画を描いていましたから、
毎週の締め切りに追われながらも、よく、気晴らしに
「シェー!」などとフザケながら
真夜中の新宿の歓楽街を徘徊したものです。

赤塚さんもとにかくお酒が好きでした。
もう十数年お会いしていませんが、
ガンをなだめながら上手に養生しているようですから
運の強い人なのでしょう。

ともあれ、作家やジャーナリストといった
昼夜を取り違えたような因果な仕事をする人たちは
大抵が不摂生と暴飲暴食のはてに消化器系臓器をやられるようです。
焼酎を肴に、ウイスキーのストレートを朝から飲んでいた豪傑は
僕が週刊ポストの編集長になった頃、
やはり連載小説をお願いしていた作家の井上光晴さんですが、
大腸ガンで亡くなられました。

食道ガンで命を奪われた作家の系譜を上げればそのリストは壮絶です。
1965年、四回の食道ガンの手術を耐えた作家の高見順さんをはじめ、
立原正秋さん、 野間宏さん、井上靖さんと
そうそうたる文壇の逸材が世を去りました。
「おい癌め酌みかはさうぜ秋の酒」という
有名な食道ガン闘病記を残した
江國滋さんは滋酔郎の俳号を持つ酒を愛する人でした。
近くでは芥川賞作家の中山義秀さん、
田久保英夫さん、SF作家の光瀬龍さん、
そして、柳美里さんのベストセラー「命」に描かれた
劇作家、東由多加さんの壮絶な食道ガンとの闘いも
記憶に新しいところです。


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