元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第57回
お金にも命にも「貪欲である」ことを恥かしがってはいけません

どこまでも抜けるようなチベットの青空に感動して、
まるで精神世界のド壷にはまったように思われそうですが、
とてもとても凡人の癌爺が
高邁な悟りの境地に入ったわけはありません。
ちょうど夏祭りの最中であったため、
首都ラサのポタラ宮殿も、古都ギャンツエの名刹古寺も、
地方から出てきた巡礼者たちの熱気で溢れ返っておりました。
寺院の狭い巡礼回廊も老若男女が押し合いへし合いです。
信心深いというか、貪欲というか? 
来世の幸福と無病息災を掴み取るために、
僕たち観光客を蹴飛ばし、押しのけてまで
礼拝の先を競うのですから圧倒されます。

ちょっと困ったことがありました。
チベットの人たちが身にまとう茶褐色の巡礼衣装からは、
バター茶とお香の香りだけでなく、
長旅の汗と埃と、なんと小便まみれの臭いも
漂ってくるではありませんか?
20世紀初頭の僧・河口慧海の
「チベット旅行記」(講談社学術文庫)を読むと、
貴婦人が「お便(ちょうず)に行ってそのままお越しになる」
と興ざめしています。
トイレット・ペーパーの習慣がないのは
不潔きわまると慨嘆しているわけですが、
これは風土や習俗文化の違いなのでしょう。
ちなみにこの旅行記は面白い本で、
純朴な庶民の姿だけでなく、金儲けに抜け目のないチベット僧や
狡猾な医師たちの行状も事細かに描かれています。
たしかにあたりに漂う臭気・異臭に閉口しますが、
そこには、なにやらウソ偽りのない人肌の運気が
ムンムンと立ち昇っておりました。

チベットの人たちのいまが
金銭的にも信仰的にも幸福かどうかは計り知れませんが、
澄み渡る青空の彼方に希望を祈る…
この勇猛果敢なエネルギーに触れて、
命に貪欲になることは少しも恥かしいことではない!
と改めて思い知らされたといってもよいでしょう。
ちょっと、命の運試しのような気分で、
チベットへ出掛けたわりには、
大病院の医師からは失笑を買いそうな話ばかりを
述べてきましたが、明日の命が一つ欲しい! 
貪欲なガン患者の実感ですから勘弁してください。
恥かしいほど、この世に未練を抱き、やがて未練を超越する…
抜けるような青空から降り注ぐ
「生命の風」に触れたことは幸運でした。

まえにガンを克服して
ヒマラヤやアルプス、富士山登山に挑戦した患者たちの話を
うらやましく思ったと書いたことがありましたが、
命の生還者たちがただ体力の回復、命の運試しのためだけに、
山に挑戦したのではないことも分かったような気がします。
ガンに襲われてから、やがて5年を迎えます。
切らずに治そうと、再発と転移の不安に怯えながらも、
心の療法にわが身を託してきたわけですが、
チベットの夫婦旅は明日の希望を覗かせてくれました。
大自然の中で心身に運気を満たす…
これも大病院の治療にまさる養生ではないでしょうか?


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2002年10月23日(水)

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