| 第93回「食べる」だけでなく「出す」
 香港湾仔(わんちゃい)の名門料理店「福臨門」で、食通の邱永漢さんが頼んだ珍味とは、
 フカヒレの煮こみだけでも、
 東京で食べれば1人前2万円はする代物でしたから、
 玄米菜食中のわが身とはいえ、
 「食べるべきか? 食べざるべきか?」
 心境はなかなか複雑でした。
 いくら「目食耳餐」で極上の中華料理に立ち向かうといっても、
 やはり舌で味合わなければ、
 それは寂しいものです。
 あまりに見事な料理の出来映えに、エイヤー!と気合を入れながら、
 カリカリに焼けた仔豚の皮を少々と
 極上フカヒレと鮑の煮こみはいただきました。
 久しぶりの“邪食”(美食家の邱さん、ごめんなさい)でしたが、
 さすがに続いて出てきた蟹肉の詰め物や
 鳩のあぶり焼きなどは、
 体が脂ぎるような気分がして耐えられませんのでパス。
 隣に座った二人の青年に喜んで?食べてもらいました。
 なんだ?玄米菜食を励行中といっても、
 結構、邪食をしているではないか?と笑わないで下さい。
 僕の考え方は、別に食事を坊さんの修業のように
 苦しんで食べることには賛成できません。
 食べたいなあと思ったものをホンの少々、
 自分の体調と相談して食べることは、
 却って気分転換になると、都合よく考えています。
 昔の日本人も、普段は玄米やヒエや粟といった素食を食べ、
 お正月やお祭りの「ハレの日」には、
 ときどき高級な魚やアンコたっぷりの菓子餅などの贅沢食を
 食べたという暮しぶりを思い起こしてみてください。
 「ハレの食事」と「ケの食事」を使い分ける…
 これは自然な伝統食やマクロビオティック食養生法の考え方にも
 通じるところがあると僕は思っています。
 ですから、海外旅行をうまく気分転換に使うには、お祭り感覚で「ご馳走」も楽しむと考えたらよいでしょう。
 しかし、なにごとも食べすぎは体によくありません。
 とくに邪食をした場合は早く排毒することが大切です。
 便秘は体に毒素を回します。
 口から薬や食べ物を入れる工夫だけでなく、
 いかに毒素を体の外に出すか?
 これが海外食べ歩き旅行の賢い活用法ですし、
 これからの健康法の極意ともなるはずですから、
 忘れないで覚えておいてください。
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