元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第463回
「大学病院が患者を死なせる」?

先日、週刊金曜日という雑誌から、
放射線医として有名な近藤誠医師の書いた
「大学病院が患者を死なせるとき」
私が慶応大学医学部をやめない理由――という
文庫本の書評を頼まれました。

近藤医師といえば、
「ガン治療を受けて後悔する患者や家族を一人でもなくしたい」
と願って、4半世紀も前から、
患者の負担の少ない医療を目指し、
慶応大学病院の中で、
孤独で果敢な闘いを続けてきた医師です。
放射線による負担の少ない療法を率先した人です。
僕は診察を受けたことはありませんが、
知りあいには、
乳房温存療法を受けて延命している人が何人かいます。

とにかく、いまの大学病院では、
手術至上主義がまかり通って、
つい10年前までは、
肋骨が剥き出しになるほどの乳房切除、
リンパ郭清の拡大手術(ハルステッド)が常識といわれ、
多くの女性患者を泣かせたものでした。

この本の中でも無謀な手術と、
大量の抗ガン剤投与によって、
ガンそのものではなく
「治療」で命を落していく患者たちの実態に、
警告がなされていますが、
ある乳ガンの女性患者が同じ病院の外科病棟から脱走、
近藤医師がそれを救出する話、
さらに院内抗争にもめげず、
慶応大学医学部に居残る決意を固めるまでの経緯が
圧巻の読み物です。

有名な持論の「がんもどき理論」「がんと闘うな理論」ではなく、
ひとりの闘う医師の「物語」として綴られているところに
著者の主張が身近に迫ってきます。
まだ読んでない人にはおすすめの一冊です。

さらに、ただの「変わった医師」の物語としてではなく、
これからの患者のあり方も知ることもできます。
治療は患者を後悔させるものではいけない!
患者は納得した治療を選ぶべきだ!
この長寿難病時代に持つべき
患者の心得を教えてくれるでしょう。


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